第3話 「あたし、もうダメ…死にたい…」

「あたし、もうダメ…死にたい…」


 そう言って、聖子は理科室の机に突っ伏した。


「まあまあ…こうしてお昼は一緒だしさあ…」



 高等部の二年になって…クラス替えがあった。


 去年、知花と同じクラスだった聖子は。

 昨日の始業式の前、クラス発表の張り紙を見て真っ白になってた。

 もー…ほんと、知花の事好きなんだから…。


 それでも相変わらず、三人でのお昼休みは続いてる。



「島沢君、ちょっといい?」


 知花がトイレに行ってて、今は僕と聖子だけ。

 そんな時、僕に声をかけて来たのは…

 生物の多田ただ先生。


 今年、教師二年目。

 僕のクラスの副担任。



「僕…ですか?」


 キョトンとして自分を指差すと。


「ええ。島沢君、クラス委員でしょ?」


 ああ…そうでした…


「ちょっと行って来るね。」


 机に突っ伏したままの聖子に声をかけると、聖子は手だけを上げて振った。



 理科室を出て多田先生について歩くと。


「あの子…七生ななおさんだっけ。」


 先生は階段を下りながら言った。


「え?あ、はい。」


「付き合ってるの?」


「いいえ?」


「どうして二人で?」


「え?」


 何でそんな事聞くのかな?って思いながら。


「あ…今はたまたま、もう一人がトイレに行ってて…」


 正直に答える。


「女子?」


「はい…」


「いつも三人でお昼休み過ごしてるの?」


「…ダメー…ですか?」


「ダメじゃないけど…」


 先生は生物準備室の鍵を開けると。


「入って。」


 ドアを開けて、僕を招き入れた。


 言われるがままに生物準備室に入ると…


「はっ…」


 いきなり…

 いきなり、先生に抱き着かれた…!!


「え…えっ…?せん…」


 うわーーーー!!

 何で!?


 先生…僕にきっ…キス…!!


 こんな告白要らないかもだけど…

 まだ何も経験のない僕は、当然…頭の中が真っ白になったし…



「…島沢君…いつもあたしの事見てるでしょ…」


「え…えええっ…?」


「…いいのよ…隠さないで…」


「……」


 これはー…もしかして、いい思いが出来ちゃうのかな?


 なんて…

 目が爛々としてしまった。



 全然先生を見てたつもりもないし…

 好きな女の子も、今はいない。

 て言うか、今まで本気で好きになった女の子がいない。


 鍵盤にばっかり興味があったし、ついでに僕が女の子っぽくしてると喜ぶ母さんのために、ちょっとばかり僕は女子力が高くて。

 そんな自分に自信が持てない部分もあって…

 自然と、女の子に対しては消極的だった。


 あ、聖子と知花は親友で戦友だから別だけど。


 恋愛対象に成り得るような存在を、見付ける…って事に対して、消極的だった。


 でも…

 そんな僕だって…



 先生は後ろで結んでる髪の毛をシュッとほどくと…


「あたしも…ずっと気になってたの…」


 自分のシャツのボタンを外し始めた。


 だ…っ…だめですよー!!








 …とは…


 言わなかった。





 だって僕は…





 健康男子だから。

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