第15話 それからのSHE'S-HE'Sは

 それからのSHE'S-HE'Sは、アメリカでCDを出して…ライヴをして、ロクフェスにも出た。

 高原さんも予想してなかった活躍をしたらしい僕らは、二年の期限を迎えて帰国する事になった。


 帰国したら…日本デビューだ。



「みんな、時差ボケ大丈夫?」


 聖子がそう言ってるのが…聞こえる…気がする…

 僕は酷い時差ボケで、座ってるのもやっと。

 向こうに行った時は全然平気だったのに…



「約一名、撃沈寸前がいるな。」


「…まこちゃん、横になったら?」


「う…うん…お言葉に…甘え…」


 最後まで言えないまま、リビングの端にある低いソファーにうつ伏せになった。



 昨日帰国して…今日は光史君ちでセン君の結婚パーティーの打ち合わせ。


 …みんな元気だな…

 僕だけ?こんな時差ボケ…

 …カッコ悪い。



 セン君のためにも…いいパーティーにしたいし…

 話し合い…


 すー…



 僕はそのままソファーで爆睡。

 そこには、セン君以外のSHE'S-HE'Sメンバーの他に、光史君のお母さんと…僕らのプロデューサーでもある朝霧さんもいたらしいけど…

 そんなのもお構いなしで…爆睡。



「…ねんね?」


「ねんね…」


 どれぐらい経った頃だろ…

 耳元で可愛い声がして…

 それから、カシャッて音が…立て続けに聞こえて…


「華音、咲華、まこちゃんねんねしてるから、起こしちゃだめよ?」


 知花の…心地いい声…

 あー…双子ちゃん…僕のところに来てくれてるんだ…

 目を開けて、一緒にごろんってしたいけど…

 …とにかく、眠い…



「やだなあ…ノン君とサクちゃんに挟まれて、まこちゃんまで天使に見える。」


 …ん?

 僕が天使とか…聖子、大丈夫…?


「ほんと、こいつ今年で二十歳だよな?可愛い奴だぜ…」


 陸ちゃんの声…

 えー…僕の事、可愛いとか…言うかな…


「まこが生まれた時の事、思い出すなあ。」


「ほんと…。ナッキーさんが『まこ』って呼び始めて、ナオトさん嫌がってたけど…まこちゃん、自分でも『まこ』って言ってたわよね。」


「それがまた可愛いのなんの…」


 朝霧さん夫婦の会話も聞こえてきて…

 うわああ…それは…ちょっと…恥ずかしいエピソード…って…思ったり…


「俺は何となくそれ覚えてるな…それで日本から来たスタッフには、女の子に間違われたりしてた。」


「だってこれ、今も下手したら女の子に見えなくないわよ。メイクしたくなっちゃう。」


 ……もしかして……

 今、みんな…僕を囲んで話してる…?

 目を開けて…起きて反論したいけど…

 まるで金縛りにあったみたいに、身体が動かない…


 …どうしたんだろ…



「あはは。ほんとに爆睡だな。」


「も…もう、やめてあげてよ…まこちゃん、かわいそう。」


「でもちょっと…このショット、愛し過ぎる…」


 そんな声が聞こえても…まぶたすら開けられなかった僕は…



「まこちゃん…ごめんね?」


 後日、申し訳なさそうな顔をした知花から、写真をもらった。


 それには…

 寝てる僕の前で笑顔の双子ちゃんと…

 うつ伏せになった僕の上に、同じようにうつ伏せになったノン君とサクちゃん。



「……」


 丸い目をして、その写真を見つめてると。


「本当にごめんね?」


 知花が両手を合わせた。


「いや…嬉し過ぎて固まってた。」


 本当に。


 帰国して…一緒にいる時間が減るから。

 双子ちゃん達…僕の事、いつまで覚えててくれるかなあ…って不安もあったけど。

 こんな写真撮ってくれるなんて…

 知花はすごくまめだから…こういう写真も、飾ったりしてくれるはず。



「…華音と咲華、まこちゃんの事、大好きだから…この写真もお気に入りみたい。」


「ほんと?嬉しいな…」


 僕の大事な知花の子供達。

 その存在は、僕にとって…また特別で。

 これから知花の実家での生活が始まるみたいだけど…

 みんな、うんと幸せになってくれたらいいなあ…って。


 僕は心から、そう願ってるんだ。

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