★★★ Excellent!!!
あなたの背中が見える景色 辰井圭斗
この作品を初めて読んだ時の感想は、「僕」が書いてくれているから、私は今の私が思ったことを書いてよいのだと思う。この作品のどこがすごいとか、そういうのではないことを(言うまでもなく本作はweb小説の中で屈指で好きな作品だし、私は今でも読んだ時の震えを部屋の空気と一緒に思い出すことができる)。
タグに目を遣る。「ノンフィクション(6割)」。――そういえば、私は今姫乃さんに「要するに七割フィクション」とタグをつけた作品を「読んでください」と言って渡している。小説だから嘘のかたまりだけれど、いくらかは私の本当なのだと。
web作家が画面越しに見せる「私」など虚構もいいところだ。丹念に作り上げたそれの一辺を目でなぞって、「あなたのことを知っている」などと言えるものか。何も知りはしないのだ。
――けれど、それでも、どこかあなたの話として読んでしまって。
今のあなたと同じところや馴染みのないところを探して読んでしまって。
それは多分、借りたアルバムの中、親しい相手を見つけて小さく笑うのに似ている。
遠く、この世界のどこか、私の知らないあなたを写した写真。
恐らくこの作品を読むのは5回目くらいだと思うけれど、5回目は印象が変わって、この作品にこう言うのは変かもしれないが――幸せだった。
(2021/09/02)
僕のありもしない青春の傷がえぐれました。あんな経験はしたことは無い筈な…
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