海のある町で綴られる、理想的な男である先輩と、その恋人である「苦手なタイプ」の女子と、にもかかわらず彼女に惹かれていく僕の、三角関係にすらなれない三角関係の物語。
自分の気持ちをひたすらにごまかし続ける主人公。なぜいつもいつも踏みとどまる方を選ぶのか。裏側へ裏側へと思考が動くのか。それは自虐的であるとともに自己防御のようにも映ります。
けっしてはっきりと言わないのに言いたいことが手に取るように分かる一瞬一瞬の心の動きが切なく、なんとかはぐらかそうとしている時に限って棘のように刺さる核心のひと言がじくりと残って抜けなくなる。
ループする漣(さざなみ)はまるで彼女と僕のモチーフのよう。せっかく拾い上げた小石を地面に戻す仕草に、踏みとどまる者としての僕が表れているようでまた切なくなります。
文章はあくまで優しくきれいでおかしみさえあり、それが余計に痛みを感じさせます。
でもこれもひとつの青春だと肯定したくもなるのです。
登場人物それぞれの気持ちをなぞるように、丁寧に読みたい作品です。