運命の文化祭ライブ
第42話 チラシ配り
沢谷先生に再び呼ばれた日に、突然決まったことがある。それは…… 私達【D-$】が、文化祭の日に行われるライブに出演する事が決まった事である。
とは言うものの、文化祭でのライブに話を持ち越したのは、この私なんだけどね。最も、文化祭でライブをやろうと思ったのは、咄嗟の思いつきであって、あとは、文化祭という多くの人が見てくれる場で、私達【D-$】の活躍を見せれば、きっと沢谷先生も、考えを改め、私達が動画を投稿する事を認めてくれるはず? そう思い、私はあの場で、凄く勇気を出して、沢谷先生に文化祭ライブをやる事を言った。
そして以外にも、あっさりとオッケーが貰えた。まっ、貰えたのは、隣の席に座っていた霧島先生のおかげなんだけど…… それにしても、私は霧島先生とは面識もないし、なぜ霧島先生は私達が文化祭でライブをしてもいいと認めたのだろう? 疑問は残るばかりだが、今はそんな事は考えている暇はない。
もし、文化祭当日のライブで体育館を満員に出来なければ、私は沢谷先生からの忠告を無視した為の、処罰を受けなければならない。同時にUTubeでの活動も終わらなければならない。
仮に文化祭当日、もし体育館を満員にする事が出来れば、私は処罰を間逃れるだけではなく、今まで通りUTubeでの活動が出来るようになる。
それを約束に、私は文化祭でライブを行う事を、沢谷先生と約束をしたのだから…… 少しでも多くの客を、文化祭当日のライブに集めないと、いけない為、私は【D-$】のメンバーである女月と紗美と詩鈴と一緒に、今日も学校内でチラシ配りをしていた。
「お願いします」
「文化祭当日に、私達【D-$】は、体育館でライブをやりま~す」
「おっ、お願いしま~す」
「あの、UTubeで大活躍中の【D-$】の生ライブですよ~」
私達は登下校の時間帯を狙い、正門前などでチラシを配ってはいるが、ほとんどの人は見て見ぬふりをして、なかなかチラシを受け取ってはくれない。
そして、正門前に一通り人がいなくなった後、私達は一旦チラシ配りを終え、校庭裏のベンチで休憩をする事にした。
「ふぁあ~ なかなかチラシってのは受け取ってくれないものなんだね」
「そりゃあ、チラシなんて誰も受け取らないでしょ」
「確かに受け取る人なんて、あまりいないね」
「普通に受けとったって、そんなのはゴミでしかないんだから」
「ちょっと、女月ちゃん!! このチラシをゴミだとか言わないでよ!! このチラシに書かれているウサギの絵、ほらっ、凄く可愛いでしょ!? これなら、部屋に飾りたくなる絵だよ!?」
私はチラシに書かれている自分で書いたウサギの絵を指で指し、女月に可愛い絵である事をアピールした。
「そんな絵、麻子は本当に飾りたいと思ってるの!?」
「えぇ!? そっ、それは…… まっ、まぁ……」
「ほらっ、麻子がそう言うんじゃ、誰も飾りたいと思う人はいないって事よ」
「そっ、それは、あまりにも酷いよ!! かっ、可愛いでしょ!? この絵」
女月からは、冷めた様な目付きで見られたチラシの絵を、今度は紗美と詩鈴にアピールする様に見せた。
「まっ、まぁ…… 可愛いと思いますわ……」
「そっ、そう思いますわ……」
紗美と詩鈴は苦笑いをやりながら言った。私はバッチリ描けたと思っていたウサギの絵だったが、どうやらそうでもなかったみたい…… 力作だと思っていただけに、ちょっぴり残念。って、そんな事はどうでもいい。本題は、このチラシをどうやって配りきるかである。
「麻子、そんな事よりも、文化祭当日に、体育館を満員に出来なかったら、相当ヤバいのでしょ?」
そう、女月の言うとおり、文化祭当日にライブが行われる体育館を満員に出来なかったら、私だけが沢谷先生からの処罰を受けなければならないのだ。
「まぁ、確かにヤバいと言ったら、ヤバいけど……」
「そもそも、なんであの時麻子はあんな事を言ってしまったのよ!?」
「それは…… みんなには今までいろんなところで助けてくれたし、私だけがみんなを、このアイドル活動をやる場でおいては、何の助けもやっていなかった。それで、【D-$】のリーダーとして、今回ばかりは、私だけが全責任を持って、1人で処罰を受けようと思ったの」
私は少し緊張をしながら言った。
「麻子ったら…… 何水臭い事言ってんのよ!!」
「そうですわ!! 麻子さんは、私達のムードメーカー的な存在ですわ」
「さっ、坂畑さんがいたからこそ、いっ、今の私がいるのです。何の助けもしていないとか言っていますけど、坂畑さんは、充分にわたし達を助けていますわ」
みっ、みんな…… わっ、私の事を、そこまで思っていてくれていたなんて…… そう思うと、私はなんだか嬉しさのあまり、両目から涙があふれてきそうになった。
例え、ネット上の誰もが自由に参加出来るUTube内での疑似アイドル活動と言えども、こう思ってくれていると知ると、凄く嬉しく思えてくる……
「麻子、自分1人だけが全責任を負って、処罰受けるのは勝手だけど…… そのついでに動画の投稿を止めると言って、全員を巻き込むのは止めてくれないかな?」
オイッ!! めづきぃ~!! その一言のせいで、さっきまでの感動が、全て台無しだよ!!
「たっ、確かに…… もし、体育館を満員に出来なかったら、わたし達にも影響はあったのですね……」
「麻子さんだけが、影響があるのではなく…… わたくし達にも影響はあったのでしたわね。そう考えると、今度のライブは、絶対に成功をさせないといけないですわ」
「そうだよ、今回のライブは、絶対に成功をさせないとダメなんだよ…… 失敗は許されないライブなんだよ」
私は改めて、今回のライブがどれだけ重要なものかを思い占めた。
詩鈴と紗美の言うとおり、今回のライブでの失敗は、私にだけリスクがあるのではなく、【D-$】のメンバー全員に大きなリスクがあるという事だと。
失敗をしない為にも、1人にでも多く、このチラシを配らないといけない。例え、このチラシに効果がなくても、チラシを配らないよりは絶対に効果がある。私はそう強く思い、その場で立ち上がった。
「さぁ、いつまでも休憩は出来ないよ!! 【D-$】解散を阻止するために、再び配りに行こう!!」
「そうは言うけど、確実に受け取って貰える方法を思いついたの?」
「そんな方法は、全く思いついてはいない」
「そのまま、さっきの様に配っても、受け取ってくれる人なんているのかしら?」
「それも分からない。でも、配らない事には、確実に誰も受け取ってはくれないよ。要は、何かを始めない事には、何かは始まらないんだよ」
私はチラシを配っても誰かが受け取ってくれるか心配をしている女月に対し、とりあえずきっかけがない事には何も始まらないという事を伝えた。
「そっ、そうね。確かに麻子の言うとおり、配らない事には、何も始まらないわね」
「そうですわ。例え、このチラシを受け取ってくれたとしても、確実に来るとは限りません。でも、受け取ってくれた事により、確実に来てくれるという可能性がありますわ」
「だっ、だからこそ…… わたし達は、このチラシを配らないといけないんです。この【D-$】の継続の為に」
「その通りだよ!!」
そして、女月もチラシを配らなければ何も始まらないという事を思い示すと、それに続くかのように、紗美と詩鈴も座っていた場所から立ち上がった。
「じゃあ、再びチラシを配りに行きましょ!!」
そして私達が、再びチラシを配り為、校庭裏から移動をしようとした瞬間、偶然にも、私達の方へと近づいてくる3人の女の子が目に入ってきた。その女の子達は、偶然にも、以前に【D-$】のファンを名乗ってきた3人組であった。
「あっ、坂畑さん達だ!! どこへ行くの?」
「今から、このチラシを配りに行くところなの」
「そうなんだ。どんなチラシなの?」
そして、私はその話しかけに来た茶髪ボブの女の子に、どうしてチラシ配りをやっているのか、その理由を語った。
同時に、一緒にいたもう1人の少し暗めの茶髪のポニーテールの女の子が、詩鈴の方を見て、ニコッとした表情で詩鈴に話しかけた。
「このチラシの絵、結構可愛いね」
「あっ、ありがとうございます…… ふっ、二葉さん……」
「そう言えば、このチラシを配っているなら、私達も手伝おうか?」
「ホッ、ホントですか!?」
「当たり前じゃないの。同じクラスの朝芽さんが頑張っているんだし、何より、こうして私達も手伝えることがあるかなっと思って……」
すると、私が茶髪ボブの女の子にチラシを配っている理由を説明していた時、詩鈴と話をしていた少し暗めな茶髪ポニーテールの女の子は、以外にも、私達のチラシ配りを手伝ってくれると言った。同時に詩鈴の発言から、少し暗めな茶髪ポニーテールの女の子の名前が、二葉である事が分かった。
「そうだよ。それに、人数が多い方がいいし、私も手伝うわ」
「それだったら、私も手伝うわ!!」
「あっ、ありがとう…… 一之瀬さん…… 三井さん……」
その後、茶髪ボブの女の子の名前と黒のショートヘアーの女の子の名前が分かった。茶髪ボブの女の子は一之瀬であり、黒のショートヘアーの女の子は三井であった。
チラシ配りを手伝ってくれるという事は、当たり前だが普通に嬉しい。確かに、人数が多い方が宣伝効果も大きくなり、その分、1人でも多くにチラシを配る事が可能なはずだから。
「ありがとう」
「ありがとうございます」
「あっ、ありがとう」
礼を言ったのは私だけでなく、女月も紗美も詩鈴も、そのチラシ配りを手伝うと言った一之瀬さんと二葉さんと三井さんという、3人のファンの人に、礼を言った。
「礼は後でいいわ。それよりも、早くこのチラシを配りに行きましょ!!」
「そうね。早く行きましょ!!」
そして、私達【D-$】と、その3人のファンは一緒に、チラシを配る為、正門前へと向かった。
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