第27話 山道を歩きながら話
アイドル活動の為の合宿の2日目は、海が見える旅館の反対側にある山を探検する事にしました。
「はいっ、みなさん、楽しんで歩いて下さいね」
「分かってるわよ。でも、夏の山って、あまりに木がありすぎるせいで、その周りにいるセミがうるさいんだよ」
「阪畑さんったら、そんな事は言わずに。わたくしがビデオカメラでその楽しそうな様子を撮影しますから、みなさんは、思いっきり楽しんで下さいね」
そう言いながら紗美は、山道を歩いている私達の様子をビデオカメラで撮影をやり始めた。最もこの日の今朝、練習以外特にやる事がなかった為、とりあえず何かを撮影しようという紗美の案の元、私達が楽しんでいる様子を撮影する事になった。そんな感じで私達は、紗美が撮影をする中、山道を探検感覚で歩いていた。
「それにしても、この道はどこまで続いているのかな?」
「さぁ、どこに行くのでしょうね? それが分からないから、探検をしているんだよ」
「そっ、それじゃあ…… みっ、道に迷ったら、帰って来られないのでは?」
「大丈夫だよ、詩鈴。来た道を戻れば、絶対に元の場所に戻れるよ」
「麻子、そんな甘い考えではダメよ。山というのはそう思っている人達を何人も遭難させているのよ」
「そうなの!?」
「そっ、そうなんですか!?」
「そうよ。だからこそ、山での遭難ってのがあるのよ。今歩いている場所は道になっているけど、もしこの先、雑草ばかりの場所を歩いたら、それこそ本当に元の場所なんて分からなくなるものよ」
「そうだね。道なき道を歩く時の注意点だね」
「でっ、でも…… そう言う時って、何か場所が分かる的なモノがあっ、ありますよね?」
「コンパスとかの事ね。残念ながら私は持っていないよ」
「私もよ」
「えぇ!? 阪畑さんも尾神さんも、もっ、持って来ていないのですか!?」
「うん」
「じっ、じゃあ、どうやって場所を調べるの?」
「それはスマホがあれば、簡単じゃないの」
「阪畑さん…… こっ、ここは山奥で電波が悪すぎて、スマホはほとんど使えないですわ」
「えっ、使えないの……」
「そうよ。電波が悪いところでは普通はスマホなんて使えないのよ」
「そうだった!!」
「じっ、じゃあ、どうするんですか!?」
「仕方がない。とりあえず、別の事を考えながら歩こう!!」
「って、オイ!!」
そんな感じで、私と女月と詩鈴は、紗美のビデオカメラで撮影をされている中、話をしながら山道を歩いていた。
そして、今度は話の話題を変えて、山道を歩く事にした。
「とりあえず別の話題として、次の投稿の歌はどうする?」
「今練習している歌ではダメなの?」
「なんか、それだといまいちパッと来ないんだよね。投稿用としては」
「そうかな? 私は別に良いと思うけど」
「でも、今練習に使っている曲は、どうも私達のイメージではないんだよね」
「わっ、わたしもそう思います」
「麻子と朝芽さんまで」
次の投稿用の曲として、今練習に使っている曲が【D-$】のイメージには合わないというのは、私だけでなく詩鈴もそう思っていた様である。
「あっ、わたくしも、今の練習に使っている曲は、【D-$】のイメージには合わないと思いますわ」
「桜森さんまで!!」
その件に関しては、紗美も私と同じ様に思っていた。
「そっ、そんなに【D-$】には合わない曲かな?」
「合わないと言われると、合わないね。【D-$】は一応アイドルだし。それに今練習に使っている曲は、明らかにアイドルの曲ではないでしょ」
「そう言われると、そんな気もしなくはないけど……」
「でっ、でも…… せっかく練習してきた曲ですし、いっ、今更変えるのはどうかと思います」
「それに関しては、朝芽さんの言う通りよ。今更次の投稿用の曲を変えてしまっら、また1から練習をしなければならないじゃないの!!」
確かに詩鈴と女月の言う通り、今まで投稿用に練習をしてきた曲を変えるとなると、今までの練習が水の泡。そう考えると、次の投稿用の曲を変えようとは思わなくなってしまう。
「練習ならまたやればいいじゃないの」
そんな中、後ろからビデオカメラを片手で持っている紗美さんの喋る声がしたので、私は後ろを振り向いた。
「紗美さん、それだとまた1から練習をしなければいけなくなってしまうよ」
「それでいいじゃないの。気に入る作品を見つけれるのなら」
その言葉を聞いた私は、紗美が凄く心の広い人の様に感じた。
「確かに、紗美さんの言う通り、気に入る作品を見つける為なら苦労は必要だと思うわ」
「そっ、そうですわ。わたしもそう思いますわ。良い作品を見つける為には、やり直しは付き物ですし」
良い作品を作るのにやり直しは必要であるという事は、私だけでなく詩鈴も同じ事を思っていた。
「というワケだから、今度の投稿用の曲は別の曲にやろうか。女月ちゃん!!」
「やっぱり、本当に変えるつもりなの?」
「いいじゃないの。1つでも良い作品を作る為には、より多くの努力と苦労が必要だよ」
「確かに、麻子のいう通りかもね。本当にやり直すとなったら、ゆっくりはしていられないわよ。それは分かっているわね」
「分かっているわよ」
「わたくしもですわ」
「わっ、わたしもです」
「どうやら。皆は本当に曲を変える気のようね。わかったわ。じゃあ、次の撮影用の曲は、別の曲にしましょうか」
「そうだよ。そうこなくちゃ!!」
こうして、女月も納得をした後、次の投稿に使う曲は、今練習している曲から【D-$】に似合う別の曲へと変更になった。
「じゃあ、旅館に戻ったら、すぐに曲探しから始めないとね」
「その後は、ダンスの振り付けも考えないと」
「あっ、あとは、歌も覚えないとね」
そして、次の投稿の曲を別の曲に変えると、私達は決意をした。とは言うものの、今すぐ旅館に引き返す事もなく、引き続きこの日は山道の探検を行う事にした。
「それにしても、次に投稿する用の曲を変えるとなったら、練習期間も含めて、UTubeへの投稿する日が伸びてしまうわね」
「確かに言われると、そうだね」
「それまでの期間はどうしようかな?」
投稿用の曲を変える事になった為、次に動画を投稿出来る日が伸びてしまった為、それまでの間はどうしようか考えた。
「ん~ じゃあ、わたしと麻子が始めて投稿に使った曲や、まだ2人でやっていた時の曲を、今度は4人でやるというのはどうかな?」
「それだと、詩鈴と紗美さんが余分に練習をしなければいけなくなるじゃない。それに、同じ曲は、観ている人からワンパターンと思われてしまって、マイナスイメージを与えかねないよ」
「じゃあ、どうするの?」
「だからそれを、今は考えてるんじゃないの?」
私は次の曲が投稿出来るまでの間のつなぎをどうするか考えていた。投稿が遅くなれば遅くなるほど、リスナーは減ると言われているUTubeでどう上手くつなぎを行うか考えていたが、いまいちパッと来るアイデアは浮かんでこなかった。
「それなら、歌を歌う以外のわたくし達を見せたらどうでしょうか?」
そんな中、またしても紗美が後ろから良い案を言ってきた。
「歌を歌う以外の私達?」
「そうよ。わたくし達の日常を見せればいいのよ。アイドルの日常だって人気があるでしょ」
なるほど、確かにその考えは良いかも。しかしながら、こんな良いアイデアをパッと浮かぶ事が出来なかったのも、きっと暑さのせいなんだろね。
「それは良いね」
「でしょ。だからこそ、こうしてわたくしが、皆さんの日常を撮影しているのですよ」
「まさか、これを次の投稿に使うの」
「そのままは使わないわよ。ちゃんと投稿する時には、きちんと編集をするわよ」
「まっ、そうでしょうね。でも、とりあえず次に投稿する動画のネタが出来て良かったね」
「でしょ。となると、ただ単に撮影をしていても面白みがないわね」
「何をするつもりなの?」
「所々で、わたくしがナレーションを入れるのよ」
「なるほど。それは良いね」
「でしょ」
こうして、次に投稿する動画が歌を歌う系の動画ではなく、私達【D-$】の日常を映した動画の投稿となる事が決まり、紗美は気合を入れたかのようにナレーションを入れ始めた。
「果たして、この山には本当に伝説の巨大ジカがいるのでしょうか?」
「いるわけないでしょ」
っと、こんな感じで、紗美はナレーションを入れながら、私達が山道を歩く動画の撮影をしていた。
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