終わらない活動
第38話 私達は解散なんかしない!!
私が【D-$】解散の危機で凄く悩み、落ち込んでいた時にファンだと思える3人の女子生徒と出会った事により、私は再び【D-$】としての活動を再開させようと決意し、同じ日の晩、家の近くの公園に【D-$】のメンバーである女月と紗美と詩鈴を呼び出した。すると、夜の遅い時間帯にも関わらず、紗美と詩鈴はすぐに、指定をした公園に来てくれた。しかし、そこには女月の姿はなく、紗美と詩鈴の2人だけしかいなかった。
「こんばんは。こんな夜遅くに呼び出してゴメン」
「こんばんわです」
「こっ、こんばんわ」
「紗美さんと詩鈴は、一緒に来たの?」
「はいっ、わたくし達は、2人で一緒に来ましたわ」
「そうなんだ。女月は一緒じゃなかったの?」
「女月さんですか…… そう言えば、女月さんには会っていないですわ」
「そうなんだ。じゃあ、もう少し待ってみましょ」
女月がまだ来ていない為、私は紗美と詩鈴と一緒に、女月が来るのを待つことにした。
あまりにも来るのが遅い為、私は女月のスマホに再度連絡をしてみたが、女月は電話にすら出ることはなかった。
いくら待っても女月は来ない為、私は仕方なく、今この場にいる紗美と詩鈴に、今の私の思いを語る事にした。
「紗美さん、詩鈴…… こんな夜遅くに突然呼び出した理由である大事な話を、今から語るわね」
「そっ、その…… 大事な話ってのは…… も、もしかして、【D-$】解散の宣言ですか?」
「解散!? わたくしは解散なんて反対ですわ!!」
「わっ、わたしもです!!」
どうやら、【D-$】解散反対に関しては、私だけでなく、紗美と詩鈴も同じ様に思っていた様である。
心配をしなくてもいい。今日、夜遅くにここに呼んだのは、解散宣言をする為ではない。だから、心配はご無用……
そして私は、緊張をする様子の紗美と詩鈴に対し、言いたかった事を言い始めた。
「【D-$】は、今後も、活動を続けて行こうと思うの」
つっ、ついに言っちゃった!! 私を見ている、紗美と詩鈴も凄く緊張をしているけど、これを言った私だって、凄く緊張をする。同時に、私がその一言を言った瞬間、先程まで凄く緊張をしていた紗美と詩鈴は、一気に緊張が解けた様に、脱力をした。
「それ、本当ですか?」
「ほっ、本当に、【D-$】は、続けるのですか?」
「うん、続けるよ」
再度確認の為に問いかけてくる紗美と詩鈴に対し、私はニコッとした表情で答えた。
「それは、凄く嬉しいですわ」
「わっ、わたしもです」
「よかった。2人とも凄く喜んでくれて」
とりあえず、紗美と詩鈴が、【D-$】を続けていくという事に凄く喜んでくれていたのは、私としても嬉しい。最も、【D-$】の活動を続ける事に反対をされたら、どうしようかと思ったけど…… 【D-$】解散に反対をしている以上、それはないっか!!
「でも、麻子さん、どうして【D-$】を続けようと思ったのかしら?」
やっぱり、この質問が来たか!! まぁ、普通は来るだろな。この様な質問。隠す必要はないので、私はあっさりと答えることにした。
「まぁ、それに関しては、実をいうと、私達のファンの子に会っちゃったからなの」
「ファンですか!?」
「ファンって、あっ、あの、ファンですよね!?」
ファンに出会ったという事を伝えた途端、紗美と詩鈴は、目を丸くさせ、凄く驚いた様子となった。
「うん、出会ったよ。今日の学校でね」
「今日、出会ったのですか!? どうして、わたくしも呼んでくれなかったのですか!!」
「そっ、そうですよ。どうして、呼んでくれなかったのですか!!」
「まぁ…… ファンの人と出会ったのも、休憩時間の間の短い時間だけだったので、つい、呼ぶのを忘れちゃって……」
「そっ、そうだったのですか!? それなら、次の休憩時間にも呼んで欲しかったですわ」
「そっ、そうですよ!! わたしだって、ファンの人達にあっ、会いたかったですよ!!」
「いや、それに関してはゴメン。でも、ファンの人の中の1人は、詩鈴と同じクラスだって言っていたよ」
「そっ、それ、ホッ、ホントですか!?」
「ホントだよ。私がこの場で嘘をついてどうする」
「誰だろう~ すっ、凄く気になるですぅ~」
同じクラスに、【D-$】のファンの人がいると知った途端、詩鈴は1人で想像を膨らまし、ときめき始めた。うん、そんな詩鈴も可愛いと思うよ。
詩鈴が1人でときめいている中、紗美もファンに関して話を始めてきた。
「ファンの人が同じクラスにいるって、なんだかすごく恥ずかしい気持ちになりますわね」
「確かにそうだね。ファンの人が同じクラスにいると、緊張をし過ぎて、授業とか集中できなくなってきそうだもんね」
「そう言えば、女月さんは麻子さんと同じクラスなんですよね」
「そうだけど、今更どうしたの?」
「とっ、いう事は、女月さんも麻子さんと一緒にファンの人に会っているんですよね~ 良いですわね~」
そんな中、紗美は私と同じクラスである女月の事を思い出し、女月も私と一緒にファンの人と出会っていると思い、凄く羨ましそうに私の方を見ていた。
確かに、同じクラスであるのなら、私と一緒に出会っていると思い込んでも無理はない。いつもなら、女月も私と一緒にいるから、ファンの人達が来た時にも、私と一緒に出会っていると思うかも知れない。でも…… 今回は違ったのだよここ最近、最も新学期の日以来、女月は私から避けるように逃げていて、同じクラスであっても、全く話をしていないんだよ。そのせいもあってか、休憩時間の時には、女月は教室にはいなかったのだよ。
「それがだね…… 実は、女月は休憩時間の時には、教室にはいなかったのよ」
「そうだったの。女月さんはなんだか、もったいない事をしてしまったようですわね」
「考え方によっちゃあ、そうかも知れないわね」
「でも、休憩時間が終わったあとに、女月さんにも、ファンの人達が来ていた事を教えてあげたのでしょ。そしたら、女月さん、凄く後悔をしていたでしょ?」
「そう思うかも知れないけど…… 実は、ここ数日間、女月は私と全く話をしていないんだよ」
私は紗美に女月がこの数日間、全く話をしていないという事を話し始めた。
「そうだったの? もしかしたら、あの時の出来事が原因なのかもしれないですわね」
「あぁ、あの時の出来事ね」
紗美の言うとおり、女月が私から逃げるように避け出したのは、新学期の日以来である。新学期の日に、私が沢谷先生に余計な事を言った為、【D-$】の解散危機となるきっかけの事を言ってしまったのが原因なんだろな……
「確かに、あの日以来、女月ちゃんは私とは話をしていないわ」
「やっぱり、女月さんは相当、アイドル活動が好きだったのね。だからこそ、凄く怒っているのですわ」
「そうでしょうね」
確かに紗美の言うとおり、女月は凄く怒っている。その証拠に、新学期の日、職員室に呼び出された後で、校庭での会話の時に、突然私に強烈なビンタをしてきたのだから。
あの凄く痛かった一発のビンタ。あの一撃が、全てを物語っていた。やっぱり、今回の出来事に関しては、女月は簡単には許してくれないだろう。
確かに、今回の一件は私が悪いかも知れない。今回は女月に直接謝るよりも、私らしいやり方で再び女月を呼び出す、とっておきの方法がある。今は直接面を向かって話をするのは難しい。だからこそのとっておきのやり方かも知れないが、このやり方は、最悪、女月を再び刺激させてしまうかも知れない。
そんな、今日の学校でファンの人達に出会った事により、再び【D-$】としての活動をやろうと思った私の思いを、女月はいないが、紗美と詩鈴に話そうと思う。それこそが今日、【D-$】のメンバーを、この公園に呼び出した本当の目的なのだから……
そして、私はゆっくりと息を吸い込み、気持ちをリラックスさせてから、喋り始めた。
「今は、女月はいないけど、次の動画は私達3人で動画を撮ろうよ」
「えぇ、3人でですか!?」
「そうよ」
「でっ、でも…… 尾神さんがいないと、【D-$】では、なっ、ないのでは?」
「確かに、【D-$】は、4人いてこそ【D-$】 でも、女月ちゃんが来ないのでは仕方がないわ」
「だからと言って、女月さんなしでやるのは……」
「でも、それしかないんだよ。私達が【D-$】として活躍をしているところを見せなければダメなんだよ!! 活躍をしているところを見せないと、本当に【D-$】は終わっちゃうよ!!」
私は凄くやけくそになって言った。
確かに女月がいなければ、4人としての【D-$】は成り立たない。でも、今は私の呼び出しには、女月は一切応じない。これに関しては、紗美や詩鈴が女月を呼び出そうとしても、結果は変わらないだろう。
だったら、やり方は1つ。【D-$】のメンバーである女月がいない状態で、次の投稿を勝手にやる事である。
勝手に始めれば、恐らく女月は『先生に動画の投稿は止めるようにと言われた後に、何やってるんだ!?』と言いに来てくれるはず。その時でいい。その時に、女月を再び【D-$】に呼び戻せばいい。
とりあえず、今は次の撮影に力を注ぐ事が大事。ここで動画を投稿する目的は、単に女月を【D-$】に呼び戻すだけでなく、古い考えの沢谷先生に私達がUTubeへの投稿を止めないというのを見せつける為でもある。
「とりあえず、麻子さんが何を急いでいるかは分からないけれども…… 次の動画の投稿は、私達3人でやりましょ」
「わっ、わたしも…… 仕方がないですけれども…… 次の撮影は、3人でやる事にさっ、賛成です。尾神さんも、きっとわたし達の動画を見てくれたら、戻って来てくれると思います」
私の強引な案に、何とか紗美と詩鈴は賛成をしてくれた。
「うん…… ありがとう。じゃあ、私だけでも頑張って行きましょ」
そして、私は夜の公園の中で、紗美と詩鈴に向かって、次の動画への意気込みを言った。
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