第20話 一緒に歌おう

 わたしは、阪畑さんと桜森さんに、歌が上手いと言われ褒められた後、これから参加をしていく、UTubeの事を考え、またしても、緊張をした様子となった。


 そんな中、桜森さんがカラオケの曲を入れる機械を取り出し、歌う歌を入れ始めた。そんな時でも、わたしは未だに緊張をした様子でいた。


「それでは、わたくしが歌いますわ!!」


 桜森さんがそう言いながら、マイクを持って立ちはじめた。そして、桜森さんは歌い始めた。桜森さんが歌う歌は、先程歌った尾神さんと同様に、明るめのポップな歌であった。


 どうやら、阪畑さん達が行うアイドル活動で歌うジャンルの歌は、この様な感じのポップな歌なんだろう。そんな歌を歌う桜森さんもまた、先程の尾神さんと同じ様な感じで、踊りながら歌っていた。


 そんな桜森さんの歌う様子を見ながら、阪畑さんと尾神さんは、マラカスを振ったりシンバルを鳴らしたりしながら、楽しそうに歌を盛り上げていた。その時の様子は、先程、わたしが歌っていた時とは様子は確実に違っていた。そんな桜森さんの歌は、尾神さんに比べると、明らかに上手いレベルであった。


 そして、桜森さんもまた、歌を歌い終えると、自分の点数が気になったのか、テレビ画面の方に注目をした。


「わたくしの点数は…… 87点!! 朝芽さんよりは低いですけれども、なんとか高得点をとれましたわ!!」


「凄いじゃないの、紗美さん。紗美さんもなかなかやりますわね」


「えへへ、でも、朝芽さんにはとてもかなわないですわ」


「まぁ、そう言ってしまったら、確かにそうだよね」


「わたくしも、物凄く頑張って歌ったのだけども、確かに朝芽さんにはかなわなかったですわ」


 そんな感じで、歌を歌い終えた桜森さんは、席に着くなり阪畑さんと話を始めていた。


「そっか、じゃあ次は私が歌うね。今度こそは、さっきよりも高い点数を出してみせるよ」


「頑張ってくださいね」


 そう言いながら、阪畑さんは次に歌う歌を考える為、曲を入れる機械を取り出した。


 そして、曲を入れる機械を手にした阪畑さんは、考える様子を見せながら、機械を見ながら、何を歌うか考えていた。


「ん~ 何を歌おうかな?」


 そんな感じで考えている阪畑さんは、曲を入れる機械のタッチ画面をタッチペンでツンツンと叩いたりしながら、考えていた。


 すると突然、阪畑さんは、わたし方を振り向き、何か良い案を閃いたみたいな感じで、わたしの方を見てきた。


「あっ、そうだ!! せっかくだし、朝芽さん、一緒に歌おうよ」


 突然のお誘いの言葉を聞いたわたしは、言うまでもなく凄く驚いた。なにしろ、1人で歌うだけでも凄く緊張をしていたのに、一緒に歌うとなったら、更に緊張がしてしまう。というよりも、なんだか照れると言っておいた方が良いのかな?


「麻子が、朝芽さんと一緒に歌うの? 止めておいた方が良いよ」


「なんでだよ?」


「だって、物凄く歌が上手かった朝芽さんだよ。そんな人と一緒に歌ったって、絶対に張り合わないよ」


「そう思ってはダメだよ。そんな気持ちでいたら、これから先のアイドル活動が出来なくなってしまうよ」


「そうですわ。そんな弱音な気持ちでいてはダメですわ」


「2人とも…… さっきの歌を聞いていなかったの?」


「聞いていたからこそ、今こうして言っているのさ」


 阪畑さんは、わたしと一緒にデュエットをやろうとしていてけれども、それを尾神さんに阻止をされている状態であった。


「それに、物事ってのは、何事にも挑戦じゃない!! だからこその挑戦だよ」


「確かに、そうだけれども…… 限度ってのがあるのよ」


「その限度を乗り越えてこその挑戦じゃない。現に私は苦手なダンスを何とか乗り越えて、ここまで来たじゃない」


 そう言えば、阪畑さんって、以外にもダンスは苦手だったんだ…… 先日の動画を観ていても、楽しそうに踊っていたので、つい気が付かなかったけれども。


「確かに、何事にも挑戦は大事よね。だったら、一度はやってみたらどう?」


「一度だけではないよ!! これからのアイドル活動では、ずっと一緒に歌っていくんだから!!」


 そんな調子で、阪畑さんは、どうしてもわたしと一緒にデュエットがしたい様子であった。確かに、アイドル活動では、全員が一緒になって歌を歌う時があるかも知れない。そんな時に備えて、今からデュエットの練習をしておいた方が良いと、わたしはほんの少しそう感じた。


「ねぇ、良いでしょ? 朝芽さん。一緒に歌おうよ!!」


「そっ、そうですわね…… いっ、一緒に歌いましょ」


 何事にも挑戦…… 先程の阪畑さんの言葉通り、わたしは恥ずかしいと緊張していると、更に2人で歌うという照れ臭い状態でもありながら、わたしは阪畑さんとのデュエットをやる事にした。


「そうと決まったら、早速曲を決めなきゃ!!」


 そう言って、阪畑さんは、曲を入れる機械を見ながら、わたしと一緒に歌う歌を探し始めた。


 そして、しばらく時間が経過した頃、阪畑さんは歌う曲を決めたのか、わたしの方にその曲を、機械ごと見せに来た。


「ねぇ、確か朝芽さんは、音楽の授業でしか歌を歌っていないと言っていたよね」


「はっ、はい。そうですけれども……」


「だったらさ、この曲ならどうかな?」


 そう言って、阪畑さんが見せに来た曲は、音楽の教科書にも掲載されている、某アーティストが歌っていた歌である。


「この歌なら、わたしも知っていますわ」


「そう!! ちょうど良かった。だったら、一緒に歌おう!!」


「そっ、そうですね」


 こうして、わたしは緊張と恥かしさを持ち合わせた状態で、阪畑さんと一緒にデュエットを行う為、お互いがそれぞれマイクを手に持ち、テレビ画面の後ろに立ちはじめた。そして、後ろのスピーカーから曲が流れ始めると、阪畑さんもまた、尾神さんや桜森さんと同様に、楽しそうに踊り始めた。


「それじゃあ、いっくよ!!」


 そして、歌が始まると、阪畑さんは元気よくノリノリで歌を歌い始めた。


 阪畑さんが元気よくノリノリで歌っている隣で、わたしは凄く緊張をした様子で、マイクを両手で持ちながら、ただ、立っているだけであった。先程から続く、2人で歌うという緊張と恥かしいという気持ちのプレッシャーから、わたしは動けずに、ジッと立っていた。そんな間にも、すぐにわたしが歌う番が回って来たが、緊張のせいか、すぐに声は出なかった。


「朝芽さん、歌う番だよ!!」


「あっ、はっ、はい!!」


 わたしは、阪畑さんに言われた後に、緊張で声がカクカクになりながらも、歌を歌い始めた。始めは、カクカク声で歌っていた歌であったが、歌を歌い始めると自然と、先程まであった2人で歌う恥かしいという気持ちと緊張が一気に吹き飛ぶ様になくなり、自然と歌を歌えるようになった。そして、歌のサビに入ると、今度は阪畑さんがわたしと一緒に歌い始め、わたしもまた、阪畑さんのペースに合せようとして、先程よりも、少し元気よく歌い始めた。


 そんな感じで歌っていた歌も、すぐに終わりを迎えた。


「点数は、どれくらいかな?」


「見てみましょ?」


 歌を歌い終えた後、わたしは阪畑さんと一緒に、先程の歌の点数を見る為、すぐ後ろのテレビ画面を見た。


「点数は…… はっ、88点!!」


「やっ、やりましたわ!!」


 わたしと阪畑さんが初めて行ったデュエットの点数は、88点と、先程の桜森さんの点数よりも、1点高かった。


「やったね!! 朝芽さん」


「はっ、はい。わたしも頑張りました」


「やっぱり、朝芽さんは凄いよ。私が歌った時以上に点数が上がってるんだもの」


「そんな事ないですわ。わたしは緊張のせいで声が上手く出ていなかったから、阪畑さんの頑張りの点数ですわ」


 テレビ画面に映っている点数を見ながら、わたしと阪畑さんは、共にお互いを褒め合った。


「2人とも、凄いですわ。2人のデュエットで、わたくしの点数よりも、1点も上だなんて」


 その点数を見た桜森さんもまた、わたしと阪畑さんのデュエットの点数を褒め始めた。


 こんな感じで、わたしが友達と行く初めてのカラオケは終わりを迎えた。

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