逃走

雷が直撃したはずなのに生きているマリアナに、周囲の人は驚きザワつき始める。それも仕方ないだろう。マリアナを鎖で引き連れていた兵士達は余波を食らって死んでるに、マリアナは生きているのだから……しかし、この状況に1番困惑しているのマリアナ本人だった。


(えっ……?どうして……?私……何で生きているの……?)


マリアナは自分が生きてる状況に酷く困惑していた。しかも、自分を拘束してい鎖に、奴隷の首輪が壊されたという、なんとも自分にとって都合のいい展開で……


(どうしてかは分からない……だけど……!!)


マリアナは目の前の自分にとって憎むべき相手を睨みつける。


自分の仕業なのにマリアナに全てを擦りつけた妹のアリシア


そんなアリシアばかりを甘やかして育てた両親


アリシアを利用して自分を嵌めた聖女リシテア


そんなリシテアに簡単に籠絡されたグレン王太子



最早、マリアナを縛る物は何もない。だから、自分のこの手で憎むべき5人に鉄槌を下せる。そう考えたマリアナだったが、少しだけ判断が遅かった……


「ッ!!?何をしてる!!兵よ!!奴を捕らえよ!!抵抗するなら殺しても構わん!!!」


マリアナがそう判断するより先に、グレン王太子が先に我に返って兵士に命令を下す。兵士達はその命を受け、すぐに剣を構えてグレン王太子達を守るように展開しつつ、マリアナを捕らえようと動く。その間に、別の兵士達はグレン王太子や有力貴族達に逃げるように促していた。


「……ちっ!」


思わず今までした事がなかった舌打ちをしてしまうマリアナ。今のマリアナなら兵士達を倒すのは簡単だが流石に数が多い。刺し違えてもあの5人だけは自分の手で殺したくても、それは今の状況では不可能だった。

だが、このまま兵士に捕まってまた殺される選択肢を選ぶなんてマリアナにはなかった。どうして生きているのか分からないが、せっかく生きているのだがら、その命をあいつらの手の者にくれてやるつもりは無かった。故に、マリアナは……


ビュ〜ーーーーーー!!!!ゴオォォ〜ーーーーーーン!!!!


マリアナは兵士の少ない所に魔力弾を放って無理矢理自分の逃げ道を作った。


民衆から様々な阿鼻叫喚の叫びが聞こえてくる。今の魔法で愛する者を失った者が出たかもしれない。小さな子供まで死なせた可能性だってある。これでもうマリアナは完全に重罪人確定だが、最早マリアナには知った事ではなかった。自分が強引に作った逃げ道を通ってマリアナはとにかく逃走を開始した。




そして、マリアナはなんとか「セイリーン聖王国」を出たが、逃走劇は未だに続いていた。


(くっ……!?このままじゃ……!!?)


兵士達よりマリアナの方が強い。マリアナは冒険者適正職業「魔導師」であるので、魔法を行使出来る。一対一で戦えばマリアナが勝つ自信があった。

だが、相手は複数いる上に、多少鍛えてはいる為、体力は女性の元公爵令嬢のマリアナより何倍もある。このままいけば数の問題でマリアナは捕まり殺されるのは確実だった。


(このままじゃ……!!?)


そんなマリアナの目にふとある建物が目に入った。あの建物に入れば、確実に兵士は中に入って来ない。しかし、それはマリアナにとっては自殺行為に等しいものだった。


(死の運命からもう逃れられないと言うのなら……!!?)


マリアナは最後の力を振り絞って全力疾走でその建物の中に入って行った。すると、兵士達はそれを見て立ち止まり……しばし呆然と眺めた後……マリアナは死んだと判断し、兵士達はみんな「セイリーン聖王国」に戻って行った。


マリアナが逃げ込んだ建物。それは、かつて魔族を率いていま魔国の王である魔王が住んでいた城で、魔王が死んだ後、その呪いで迷宮化し、難易度SSSランク。何人もの「勇者」称号を持った冒険者が攻略不可能と諦めた迷宮「旧魔王城」だった……

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