公開処刑の日

そして今日の正午、予定通りにマリアナ・フォン・エーテルギアの公開処刑が行われる事になった。


マリアナは、聖魔法の力がこもった鎖で完全拘束されながら、兵士達に引きずられるように断頭台へと向かわされた。そのマリアナの様子を野次馬根性丸出しの多くの民衆が見ていた。


マリアナの姿を見て、同じ女性としてあぁはなりたくないわないね〜ささやき合う女性


ボロボロながらその美を損なっていない姿に、思わず生唾を飲み、一回だけでもヤラせてもらえないもんかと言う男性


何故マリアナがあんな風に連れて行かれるのか分からずに首を傾げて親に尋ねる子供


民衆の反応は様々だが、やはりそんな民衆の1番多い反応は、マリアナを糾弾する声だった。それも当然だろう。マリアナは領民の税金を悪用した罪があるのだ。人々は皆、マリアナに怒っていた。それが、マリアナがやった事でないとも知らずに……


そんな中、マリアナに向かって石が飛んできた。その石がマリアナの額に当たり、マリアナの額から軽く血が流れる。マリアナを連れている兵士達は石を投げないように民衆に注意する。しかし、これはマリアナへの配慮などではなく、自分達に石が当たる可能性がある為の注意だ。


そんな風に石を投げられて怪我を負わさせても、文句を言う気力すら失くしているマリアナ。そして、マリアナはだんだんと自分が処刑される断頭台へと近づいていく。その断頭台では、元婚約者のグレン王太子が嫌な笑みを浮かべて仁王立ちしていた。そのすぐ側には聖女リシテア。更に、少し離れた所に、ガイゼルにクレアナにアリシアの姿もあった。一応、最後ぐらいは見届けようという考えなのだろうか?



(あぁ……結局……私は……憎むべき人達の手によって葬られてしまうのね……)


マリアナは、ここにきて完全に自分の死を悟った。


(けど……どうせ死ぬなら……あの人達の手じゃなく……別の方法で死にたかった……)


マリアナはそんな風に考えていた。が、実はそれすらさせられないように、マリアナにはある首輪がなされていた。それは、奴隷に付ける首輪で、主人の命令には絶対尊守の魔法がかけられており、その主人グレン王太子がかけた命令が


「公開処刑の日まで絶対に命を絶つ事を禁ずる!!」


だった。マリアナを嫌悪していたグレン王太子は、自らの手でマリアナを処刑したくて仕方なかった。故に、絶対に自殺しないようにそんな命令を下したのだ。故に、マリアナはどんな拷問で死にたいと思っても、自ら命を絶つ事が出来なかった。



が、そんなマリアナの望みを叶えるかのように、突然マリアナの上空で雷が鳴り出した。そして、その雷がマリアナに向かってきたのである。


雷が自分に向かってきているというのに、何故かマリアナはその雷がゆっくりと自分に優しく近づいてきているように見えた。そんな雷を見て、マリアナは笑みを浮かべていた。


(あぁ……神様……あなたは本当にいたんですね……ありがとうございます……憎むべき人達の手で殺されないようにしてくれて……)


マリアナは自分の最後の望みを叶えてくれた神に感謝を捧げた。




しかし、この雷が本当に天の助けだと思わせるような出来事が起きた。


ド〜ーーーーーーン!!!!ビシャアァァォ〜ーーーーーーン!!!!


マリアナに突如雷が直撃する。グレン王太子達はその眩しさにすぐに眼を瞑る。

そして、ゆっくり目を開けると……マリアナを連れていた何人かの兵士が雷の余波を受け黒焦げになって死亡していた。これは、マリアナも死んだと誰もがそう思っていた。


しかし…………


「ッ!?……えっ……?あれ……?私……どうして……?」


なんとマリアナは生きていた。しかも、あの雷でマリアナを縛っていた鎖や首輪は全てボロボロに壊れた状態で……

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