復讐の道具

イービルエルフ。それは魔族とエルフのハーフで、「セイリーン聖王国」では忌み子と呼ばれている存在である。

特徴としては、ダークエルフと呼ばれる種族とよく似ているが、ダークエルフは混血とかではなれっきとしたエルフ族で、ただ、攻撃型の魔法属性が強いと肌が浅黒いエルフになる。それが、一般的なダークエルフの定義だ。

そして、イービルエルフは、ダークエルフより若干肌の浅黒さが薄く、ハーフエルフと呼ばれる人間とエルフ族のハーフと同じ、エルフ族特有の長い耳で、人間と同じように若干の丸みがある耳をしているのが、イービルエルフと呼ばれる種族の特徴である。


だが、イービルエルフの最大の特徴は身体的なものだけではなかった。


「凄い……!?まだ赤ん坊なのにとてつもない魔力を感じる……!?」


イービルエルフの最大の特徴、それはエルフやダークエルフよりも高い魔力を保有している事にある。元々強力な魔力を持つと言われている魔族と、同じぐらいに魔力を保有していると言われているエルフのハーフである。そこから産まれた子が強力な魔力を保有しているのは当然なのかもしれない。ましてや、魔族で最強ともいわれてきた魔王レインブラッドの血が入ってる子達である。その魔力は計り知れないものがあるだろ。


「ふ……ふふふふ……!!フッハァハハハハ〜ーーーーーーーー!!!!」


マリアナはとうとう耐えきれずに歓喜のあまり、その双子を抱え上げ、元公爵令嬢らしからぬ下卑た高笑いをあげてしまう。しかし、最早マリアナはこの高揚感を止める事が出来なかった。何故なら、ようやく自分の望みを叶えられる物が見つかったのだから。


「くくく……!!この子達を育てれば!私は!あいつらに復讐する事が出来るわ!!!!」


パッと見ただけでも、自分よりも高い魔力を保持しているその赤ん坊2人を見て、マリアナはその赤ん坊を、自分が復讐しようと誓っている相手に復讐する為の道具にしようと決意したのである。例え、それが何年もかかる事であっても、マリアナは構わないと思った。どうせ、彼らは自分が生きているとは知らずにのうのうと暮らしているのは目に見えている。その間に、自分は復讐する為の準備を着々と整えるのだと。


「ふふふふふふふふ……!!今は呑気に贅沢な暮らしを満喫してなさい!いずれ、私が貴方達を……ふふふふふふふふ……!!」


マリアナは高鳴る高揚が抑えられず、再び高笑いをあげる。今、ここにマリアナはついに自分が復讐する為の道具を手に入れたのだった。








と、この頃のマリアナはそう思っていた。まさか、後に自分のこの言動を死ぬほど恥じる時が来るなんて、復讐する為の道具が手に入り喜んでいる今のマリアナには想像すら出来なかった。

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