「新魔国」冒険者ギルド

ティリア達は無事というか、ほぼ無傷で短時間で「迷宮」を攻略し、今は「新魔国」の冒険者ギルドで、獲得した魔石の鑑定を行っていた。

クロムが「迷宮」の攻略を行う事は、事前にギルドに通達しているので、クロムが「迷宮」攻略を行っているのはギルド職員も知っているだろうが、こんな短時間で攻略出来たなんて驚くだろうとティリアは考えていたが……


「おかえりなさいニャ。今日も早い「迷宮」攻略ありがとうございますニャ」


と、ニコニコ笑顔でいつもギルド受付をしてくれる猫族の獣人のミャア姉さんこと、ミアさんがいつも通りクロムから受け取った魔石を鑑定してるのを見て、ティリアはこれはもう日常茶飯事の光景なのかと、最早驚きの言葉すら出なかった。


「鑑定終わりましたニャ!皆さんの取り分をしっかり分けたので受け取ってくださいニャ!」


ミアがようやく鑑定室から出て、四当分された金貨袋をクロムに差し出した。


「ありがとうございます。では、皆それぞれ受け取ってください」


クロムがそう言うと、リアとグランが自分の報酬分を受け取った。が、ティリアは呆然と立ったままなので、クロムがティリアに声をかけた。


「どうしました?ティリア。自分の分の報酬をちゃんと受け取ってください」


「えっ……あっ……いや……でも……私!受け取ることが出来ません!!!」


報酬の受け取りを拒否するティリアに、ミアは首を傾げる。


「どうしてニャ?私はこういう仕事はしっかりしてるから、きっちり平等に報酬は分け与えてるニャ」


「いえ……ミャア姉さんの仕事を疑ってる訳じゃなく……私……「迷宮」で何の仕事もしてないから報酬を受け取れないんです!!!」


ティリアは、「迷宮」で治癒術師として仲間の治療をしておらず、しかも、魔石だって2、3個程度しか持ち歩いていない。1番仕事していないのは誰かと問われたら、間違いなく自分であろう。そんなティリアに声をかけたのは、1番「迷宮」で活躍したリアだった。


「何も問題ないわ。そういう契約だもの」


「契約……?」


「パーティーメンバーでない私を「迷宮」に参加させてほしい。報酬は全員にきちんと平等に分け与えるで構わないからっていう契約をね」


リアの言葉に更なる疑問が生まれるティリア。何故リアはそんな契約をクロムと交わしたのだろうか?誰かのパーティーの下で働きたくないというのなら、自分だけのパーティーを作ればいいのに……そんな疑問に答えたのはリアではなくミアだった。


「なんとなくティリアちゃんが言いたい事が分かるけど、リアさんはまだCランク冒険者だから自分だけのパーティーを作れないニャ」


「Cランク冒険者!!?」


ギルドに来てティリアは初めて驚愕の叫びをあげた。


ほぼたった1人でAランクの「迷宮」の魔物を倒し尽くしたリアは、まだCランク冒険者だった。

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