旧魔王城

マリアナは旧魔王城に入るとその場でガックリと崩れ落ちるようにしゃがみこむ。


「流石に……追って来ないか……」


マリアナは荒い深呼吸を繰り返しながら、入り口の扉を確認するが、扉が開く気配はない。それも当然だろう。SSSランク指定されている超難解迷宮の「旧魔王城」に入るなんて自殺行為にも程がある。何も装備やアイテムも持たず入ったマリアナは、入った瞬間に死んだと判断されているだろうとマリアナは思った。


が、しかし……


「……全然魔物が来ない上に全く魔物の気配を感じない……?」


マリアナは冒険者適正職業を持っている為か、魔物の気配にも多少敏感になっている。が、マリアナが「旧魔王城」に入ってから、魔物がマリアナに襲いかかるどころか、魔物の気配を全く感じなかった。噂では入った瞬間に高ランクの魔物が大量に襲いかかってくると聞いていたのに……



実は、この「旧魔王城」。敵意や害意などを持って現れる者には容赦なく牙を剥くように、かつての魔王がそう魔法で施したのである。故に、ただ逃げ場所を求めてやって来たマリアナに反応しなかったのである。そして、その事実をマリアナが知る事は永遠にない……



「これから……どうしよう……」


マリアナはこれからの事を考えて軽く溜息をつく。マリアナがこれからしたいのは……やはり復讐だった。


自分だけ厳しくし、妹のアリシアにはひたすら甘やかした上で、自分をアッサリと切り捨てた両親


そんな甘えを一心に受けて、ワガママに育ち、最後には自分がやった犯罪をマリアナに擦りつけたアリシア


自分の事をひたすら毛嫌いし、更には自分へあれほどの拷問を命じて最後には処刑しようとしたグレン王太子


そんな奴らを利用して、マリアナを追い落としたとても聖女とは思えないリシテア


マリアナは最低でもこの5人は自分の手で亡き者にしたいと考えていた。が……


「私1人では絶対に不可能ね……」


5人とも国の重鎮と呼べる人物達だ。自分の家であるエーテルギア家は、公爵家でも一二を争う名家であるし、グレン王太子は言うまでもなく次期聖王候補だ。ヴァルス聖王には他に子はいない為、最早確定したも同然である。リシテアには貴族・平民と言った身分はないが、異界から来た聖女という立場がある。彼女の周りは常に「セイリーン聖王教会」の者が彼女を守護している。それだけでなく、各有力貴族の子息や、騎士団の団長の息子、挙げ句の果てにはグレン王太子とも関係を持っている為、彼女の防備は万全と言っても過言ではないだろう。

そんな5人に立ち向かうのだ。無策に1人突っ込んでいっても先程のような目にあうのは火を見るよりも明らかだ。どうしたものかとマリアナが頭を悩ませていると……


くぅ〜ーーーーーー!!!キュルルル〜ーーーーーー!!!!


マリアナのお腹の音が鳴ってしまい、思わず頰を真っ赤に染めてしまう。


「……こんな時でもお腹は空くのね……」


思わずマリアナはそう呟くが、マリアナは拷問されてから今まで何も口に入れていない。しかも、先程あれほどの逃走劇をしたのだからお腹が空かないはずがない。


「……とりあえず……食料を探しましょう……あるか分からないけど……」


マリアナはひとまず今後の事を考えるのを放棄して、マリアナは食料を求めて「旧魔王城」の散策を開始した。

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