全て失った令嬢は、偶然にも双子の魔王の娘を拾ったので復讐の道具にしようと思ったけれど、娘が可愛いので復讐辞めて母親になります

風間 シンヤ

序章:全て失った令嬢は復讐を決意するが……

全てを失ったあの日

今日、正午のこの時間に、マリアナ・フォン・エーテルギア元公爵令嬢の斬首刑が行われようとしていた。

彼女、マリアナの罪状は「セイリーン聖王国」の異界からやって来た聖女リシテアを虐め、あろうことか、自分の領地の領民の血税に手を出して殺し屋を雇い、殺害しようとしたとして斬首を、元婚約者であるグレン王太子に言い渡された。他にも様々な罪が言い渡されたが、それら全てマリアナには全く身に覚えがない罪だった。

グレン王太子に婚約破棄と数々の罪状を読み上げられたあの日、マリアナはそれは違うと否定したが全く聞いてもらえず、それどころか……


「ふん!此の期に及んで罪を認めぬなとは何と醜い奴!父上から気に入られてるかと良い気になりおって!」


マリアナとグレン王太子の婚約は、「セイリーン聖王国」の王、ヴァルス聖王の一言で決まった婚約だった。故に、グレン王太子が自分と嫌々接していたのはなんとなく察していたマリアナだったが、まさかここまで自分を嫌っていたとは思わなかった……


「大人しく罪を認めたらすっぱりと斬首だけで終わらせてやろうと思ったが!もう許さん!マリアナ!貴様は斬首刑が執行されるまでの間!拷問を受けてもらう!!!」


グレン王太子の宣言に目を見開いて驚くマリアナ。もう斬首を言い渡されてる自分に、更に斬首前に過酷な拷問を下すなんて……確かに、マリアナの罪状が本当なら、マリアナがそれだけの事をされてもおかしくないのだが……


しかし、どんなにマリアナが叫ぶように否定しても聞き入れてもらえず、マリアナは兵士に連れて行かれ、拷問部屋でマリアナはそれはもう口では言えないような様々な拷問を受けた。その様々な拷問により、彼女は性行為以外の方法で純潔の証を失い、最早、否定の言葉はおろか、何かを喋る気力さえ失ってしまった……


こうして、本当に過酷なほどの拷問を受けたマリアナは斬首刑が執行されるまでの間、牢に放り込まれる事になった。最早抵抗する気力さえ失ったマリアナは、されるがままに牢に入れられ、そして、崩れるように牢の床に横たわった。


「ふん。随分と堕ちた姿になったもんだ」


「本当に醜いったらないわね」


そんなマリアナの牢の前にやって来たのは、マリアナの両親。ガイゼル・フォン・エーテルギアと、クレアナ・フォン・エーテルギアと、そして……もう1人……


「ふふふ……本当に哀れな姿になられましたね。お姉様」


自分と血を分けた妹のアリシア・フォン・エーテルギアだった。


「アリシア!もう行きましょう!こんなゴミ屑を見ても時間の無駄でしょ!」


アリシアにそう言って、ここから出るように促すクレアナ。どうやら、マリアナに会おうと言い出したのはアリシアのようだった。しかし、アリシアは首を横に振る。


「いいえ。お母様。例えこうなってしまっても、彼女は私のお姉様ですもの。最後に姉妹2人っきりでお話させてくださいませ」


「いや、しかし……アリシアの身に万が一があったら……」


「このような状態の者に今更何が出来ましょうか?」


アリシアのその一言にそれもそうかと納得したガイゼルとクレアナはすぐに戻るようにだけ伝え、アリシアの願い通りにした。

マリアナはそんな家族達の方を見なかった。いや、見る気力が一切湧かなかったと言った方が正しいだろうか。それだけ、拷問の数々はマリアナを精神を疲弊させていた。そんなマリアナを見てアリシアは口角をつり上げた笑みを浮かべ




「私の罪を全て被っていただきありがとうございます。お姉様」

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