ティリア、最強の「魔導師」と出会う

そして、ついにティリアが初の「迷宮」初陣の日が訪れた。最後の最後まで念入りに準備を行ったティリアは背負ったリュックがパンパンになる程用意し、集合場所にはだいぶ遅れて到着するはめになった。


「すみません!!!遅れまし……た……?」


ティリアが準備場所に着くとそこにはティリアが目を疑うような光景があった。何故なら、集合場所にいたのはクロムとグランの2人だけだったからだ。


「おいおい!?新入り!?何だ!?その大荷物は!?多すぎだろ!?」


「グラン。笑ってはいけませんよ。僕達も詳しく説明してない以上、彼女がこれだけの準備をするのは普通の事ですから」


ティリアの大荷物を見てからかうように笑うグラン。それを微笑を浮かべて諌めるクロム。

だが、ティリアからしたら2人の方がどうかしているとしか思えない。これから「迷宮」に向かうというのに、メンバーは自分を入れて3人な上に、グランもクロムも武器等は持っているものの、ほとんど何も持っていない。この状態で「迷宮」に向かうなんて頭がおかしいとしかティリアには思えなかった。


「あの……クロム様……もしかして私達3人だけで「迷宮」に向かうんですか……?」


「いいえ。流石にそれはないですよ。もう1人やって来ますから、その方が来られた向かいます」


もう1人来るという言葉にティリアはホッと安堵する。が、正直4人でも「迷宮」を攻略するには少な過ぎるのだが、目的が自分に「迷宮」を体感させる事なら、上層だけ攻略して終わりかな?とティリアはそう考えていた。しかし……


「あなたがなんとなく何を考えているかは分かりますが、今日はAランクの「迷宮」を完全攻略するつもりですよ」


「Aランク「迷宮」を完全攻略!!?」


クロムの言葉に目を見開いて驚くティリア。それは絶対不可能だとティリアだけでなく誰もが思うだろう。Aランク「迷宮」なら、上層部だけでも中にいる魔物はBランク級。エリアボスやダンジョンマスターに至ってはSランク級の魔物が飛び出してくるだろう。それを4人で、しかもティリアはまだ新米の「治癒術師」だ。ティリアが絶対に不可能だと思っても仕方ないだろう。


「そうですね。最初に説明しておきます。これからあなたが会う人物は最強の「魔導師」ですよ」


「えっ!?クロム様よりもですか!!?」


「彼女に比べたら僕なんて比較対象にすらならないですよ」


笑ってそう返すクロム。クロムも「黒の魔導師」として「新魔国」で名を馳せる冒険者だ。そのクロムが比較対象にすらならないと言わせるなんて……一体どんな人なんだとティリアがそう思っていると……



「待たせたかしら」



突如、そんな女性の声が聞こえ、ティリアが慌てて振り返ると、そこには自分と同い年ぐらいの銀色の長い髪をなびかせた絶世の美少女が立っていた。

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