第19話 秋葉千鶴の定義2
グループLINEでは、秋葉のみが既読にならなかった。みんな、翌日の実地調査について、いろいろ雑談しているというのに。
僕は少し気になって、直接秋葉に電話をかけてみた。
「・・・もしもし。」
3コールくらいして元気のない秋葉の声がした。どうやら相当辛いようだ。息が苦しそうな気がする。
「大丈夫か?」
とっさに出た言葉はこれだけだった。
「うーん。たぶん?」
「たぶん?ってなんで疑問形なんだよ。ま、無理そうだったら、明日の集合時間までに連絡くれればいいから。」
「うん。」
素直なうえに元気がない。相当、参っているご様子。
「お大事に。」
「うん。おやすみ。」
僕はスマホをベットに放り投げると、明日の支度にとりかかった。そして、1学期にも似たようなことがあったなぁ、と思い出した。
秋葉千鶴は修学旅行の前日にも風邪をこじらせていたということだ。初日はマスクして辛そうにしていたのを横目に見たのを思い出し、
「遠足前の小学生かよ。」
と、不意に口から言葉が出た。そして、ということは今回の実地調査は相当楽しみだったんだろうことが窺い知ることができるわけで___。
そう考えると、なんてわかりやすい奴なんだろうと笑いが込み上げてきた。本人は体調不良で辛いだろうが、正直、単純というか、可愛いというか、なんというか。
さて、問題は明日だな。
僕は、オカルトは信じていないんだが、こうも嫌な予感がするとなると色々考えることが出てくる。そもそも、さっき電話に出たのが本物の秋葉なのかも疑わざるを得ない。
僕と秋葉の共通点をまず考える必要があった。まだ、出会って半年も経っていないが、意外に一緒に行動していたのが浮き彫りになって、少し恥ずかしい。そして、その中で、もし、秋葉のドッペルゲンガー(以後、ドッペルと呼ぶ)が記憶までもコピーできるとするならば、秋葉千鶴の定義を構築しておく必要がある。
そこで、細かいしぐさや口癖などいろいろ思い出してみたが、あることに気付く。あれ?僕って秋葉のことかなり好きなんじゃないか?それなのに、思い返せばいつも話の発端は秋葉からである。ということは、秋葉は「僕のこと嫌いではない」ということだな。良かった。
で、ドッペル対策として、1学期のある
僕の予想では、ドッペルにも弱点があるはず。そう考えるならば、「コピーであるがゆえの違和感」こそがこちら側の最大の武器であると考える。つまり、第6感ということだ。そして、それは感情の変化ともとれる。
まぁ、あれだ___。こういうのは考えてもわからないということだ。
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