第5話 情報共有と考察1

「お待たせしました!オーナー厳選チーズのカルボナーラ2つに水出しアイスコーヒー2つ、トーストセット(アイスコーヒー付き)2つですね。あと、食後にイチゴパフェDXとチョコパフェDXですね!」

先ほど案内してくれた店員さんは不機嫌な女子学生二人と、財布の中身を確認する男子学生二人を交互に眺めながら、にやにやしている。名札には、「喫茶レイニー」のマドンナ・まなというのが見えて、男子学生二人は、確かにそうだな、と思っていたところだった。

「すみません。ティラミス2つも食後に追加してくださーい。」

笑顔なのに目の笑っていない秋葉の追加注文の声が聞こえて我に返ったが、時すでに遅しといったところか。

「はーい。」

と、まなさんの元気な声の後、

「「なん、だと・・・」」

僕らの声が負のハーモニーを奏でた。それもそのはず、女子二人の合計金額は、3000円+追加の800円。かたや、男子は二人で900円なのである。修羅とはたぶんこのことなのかもしれない、と考えていた。

「この格差社会、いや、女尊男卑じょそんだんひは何なんだろう。まぁ、いいや。いただきまーす。・・・で、誰から話す?」

こんがりとして程よい焦げ目のトーストを口に運びながら、眼鏡が沈黙を破る。

「それじゃぁ、私から。」

と、パスタをくるくるしながら秋葉が言うので、2の親愛しんあい女学院の歴史からということになった。

 親愛女学院は今から55年前に設立された。当時は、進学校ではなく商業高校として設立されたそうだが、時代の流れで、35年前に進学校となった。設立当初は1学年10クラスの大規模な学校であったが、少子化の影響もあり、現在は6クラスであり、偏差値は僕たちの通う公立の山鹿やまが高等学校と同じくらいの偏差値である。

「まぁ、この辺までは誰でも調べればわかるかもだけどね。面白い新聞記事を見つけたの。」

嬉々とした面持ちで秋葉がスマホで撮影した古い新聞記事を見せてきた。

   「昭和50年8月9日。学生変死!警察は殺人と自殺の両方から捜査!」

という記事だった。当時の学校は夏休みであり、今の学生と違い、基本的には家事手伝いをするのが当たり前だった時代であるにも関わらず、その学生は学校で死亡していた。首を絞めたことによる窒息死ちっそくしであったが、天井に吊るされたひもが切れており、首吊り自殺と安易に決定することのできない警察は、遺族の了承を得て司法解剖を行ったようだ。結果は窒息死に間違いないことは判明したが、死亡推定時刻が深夜1時から深夜3時ということが判明し、その時刻が丑三つ時であることもあって、呪殺、儀式といった単語も飛びっている。さらに、首吊り現場は密室であったということ、その当時は宿直しゅくちょく制度が生きており、見回りをした教師は、ちょうどその時間帯に見回りをしており、学生の目撃はなかったと証言している。

「でね、さらに面白いのがここ!」

秋葉が次の新聞記事をスワイプして示す。そこには、その死亡した日の死亡推定時刻帯に一緒にいたという、男子高校生がいた。その男子高校生は少年法の影響か名前が記載されていなかったが、その学生が一緒にいたという場所は、現在は過疎化の進む山奥のしろがねのむらだった。当時は、温泉街で賑わっていたが、湯が枯れたことから、衰退した村である。

 当時、その学生を警察は取り調べしたが、結果として証拠がなく、言い分と死亡推定時刻が噛み合わないこともあり、子供の戯言ざれごととして処理されたようだ。その戯言の中に「地蔵が嗤っていた等の意味不明な言動もあり、精神疾患が見受けられる」との記載がある。

「ねっ!面白くなってきたでしょ!?」

秋葉は満面の笑顔である。しかし、その他の三人は不安な面持ちだった。調べた情報もあって、それに照らし合わせたのだろう。そういう僕も嫌な予感と寒気がしたのだから。


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