第18話 秋葉千鶴の定義1

 いよいよ、お泊りの実地調査である。私こと秋葉千鶴15歳は、ウキウキとしていたのだが___。

 花火大会の後、残念なことに風邪をひいてしまった。1日で直そうと、市販の薬やらなんやら試してみたが、全く熱は下がらない。それどころか、解熱剤の効果も空しく高熱が下がることはなかった。

 でも、どうしても行きたくて、ギリギリまで久遠達に連絡はしないつもりでいた。もしかしたら当日には完全完治もありうると期待したかったからだ。しかし、それも空しく、私は高熱にうなされ、スマホすら握れないくらいに衰弱してしまったわけだ。

 折角、久遠を磨き上げたこのボディで悩殺する予定だったのに。可愛らしさにも磨きをかけ、服もいろいろ買って準備は万端だったというのに。

「うー。」

布団から起き上がろうにも、全然力が入らない。障子から朝日がうっすらと、明るくなってきた。

 私の家は昔からの農家の豪族の名残があり、無駄に広い。そんなだだっ広い空間に住まうのは、両親とおばあちゃん、そして一人っ子の私だけ。私の部屋も縁側付きで、無駄に広い。本棚にはオカルトな書物とマンガがぎっしりだ。それでも持て余した空間に、勉強机がある。そして、その机の上には私の宝物がある。久遠がくれた、1学期のとても刺激的でドキドキした、あの出来事の思い出が詰まった、記念品・・・

 おそらくあの出来事が無かったら、私は久遠という人間にこんな思いを抱くことはなかったはずである。正直、告白は数えきれないくらい受けている。いろんな男子とデートもした。でも、心のどこかで違うなって思っていた。結局、上手くいかなくて、辛くなってお別れを繰り返してきた。

 しかし、久遠は違った。あんなにもいろんなことに興味なさげで、無気力なのに、時々魅せる男らしさというか。一番は対等に接してくれるということだろう。一緒にいて全く苦がない。それに、楽しくて仕方がない。多分、私にとっての初恋なのだろう。

 だから、この悲しい気持ちが涙を作るんだろうか。ただ、熱にうなされて辛いからだろうか。

 それに、あの久遠という男、優柔不断ではっきりしないし、私のこと絶対気にかけてるはずなのに、その肝心なことは言わないし。男らしさどこ行ったんだよ。あー、なんか、悲しみから怒りが湧いてきた。元気出てきた気がする。

「うー。」

起き上がろうとして、間接の節々が悲鳴を上げて、断念する。

 やっぱり、悲しい、かも___。

「遠足前の小学生か。」

私は、そんな自分を嘲笑して寝返りをうつと、ふて寝を決め込んだのだった。

「うー。久遠のバカ。」


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