第9話 情報共有と考察5

 喫茶・レイニーを出る頃には夕方になっていた。空は今にも降り出しそうな模様で、遠くで稲光とゴロゴロという音が聞こえてきた。どうやら、夕立が近いらしい。

 バスの時間もあることから、今日のところはここで解散ということになった。須崎さんは電車で帰るということで駅の方へ、神崎はアニメートに行かなくてはならないといって街の中心に向けて走っていった。

 4人で喫茶・レイニーで考察した結果、近いうちに実地調査に行くこととなった。それは、僕の見つけた文献にあったしろがねのむらである。意外に遠いので、おそらく1泊はしなければならないだろうということになったが、いかんせん年頃の男女である。作戦を考えなくてはならないだろう、と眼鏡が神妙な面持ちで言っていた。

「ねぇ、久遠。」

ぼんやりとバス停に向かっていると、隣を歩く秋葉が声をかけてきた。夕日のせいか顔が赤く見える。

「何?」

僕がそういうと、

「この調査って必要なのかな?」

と、言い出した。4人で図書館で調査した内容から嫌な予感しかしない。しかし、所詮噂話でしかないオカルトの類である。そう考えるのも無理はないが、考察すればするほど嫌な予感しかしないのだ。

 僕たちが調査と考察をし、過去の文献から考えるに、定期的に似た事件が発生している。それらには嗤う地蔵が関与している。どれも、タイムパラドックスとしか思えない不思議な事象が発生している。そして全ての事件において、死者が出ていることが一番の問題なのである。つまり、それらの不思議な現象においてどう対処するべきかを探さなくてはならない。その結果が実地調査であるという結論になったのだ。それに___。

「秋葉に何かあったら困るから、僕は必要だと思うけど。」

と、僕は答えた。秋葉の顔がさらに赤くなったように見える。

「ねぇ、久遠は私のことどう思ってる?」

唐突な質問が来た。でも、僕の中の答えは決まっていた。だって、凡人の僕には秋葉には必要のない存在になることはわかりきっている。秋葉は男子のあこがれの高嶺の花なのだ。

「大事な・・・友達かな。」

「___バカなの?」

「え?」

頭の部分が聞き取れなくて聞き返すと

「久遠ってほんとバカ!」

急に不機嫌になる秋葉に困惑する。ツカツカと先に早歩きしていく秋葉を見送った。そして、

「あ・・・。」

バス停で一緒になって、気まずいと思った。それと同時に雨が降り出した。僕は鞄から折り畳み傘を取り出して、秋葉の隣に立った。

「傘無いの?」

僕が言うと、

「そうよ。バカ。」

というので、

「バカで悪かったな。」

と答えて、傘の半分を貸してやることにした。

「・・・ありがと。バカ。」

「バカって言ったやつがバカなんだよ。」

僕がそう言って笑うと

「ほんと、バカはこれだから___。」

と、秋葉は寂しそうで、それでいてきれいな笑顔を僕に向けてきた。僕は、ドキリとして、「ほんと、バカはこれだから___。」という秋葉の言葉をリフレインした。そして、自分の濡れる肩を気にせず、秋葉が濡れないように尽力するのだった。

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