第16話 悪夢2

 ものすごい頭痛がして、ゆっくりと目を開いた。するとそこにぼんやりと輪郭が見えた。

「どうして?」

声を聴いて分かった。これは秋葉だ。しかし、僕はどうしてリビングのソファーに寝ているんだろう。

「何が?」

秋葉の問いに質問すると、

「あ、目が覚めたんだ。」

と、秋葉が小声でそう言う。

あたりを見渡すと、どうやら、秋葉と二人きりのようだ。

「とりあえず電気つけよう。」

僕は、ふらつく足取りで、電気のスイッチを押す。部屋が見通せるようになり、時計を見ると深夜2時だった。

「えーと、僕はどうして寝ているんだっけ?」

記憶がないことは不安で仕方がない。

「えっと、久遠のお姉さんが飲んでた日本酒を間違って一気飲みしたんだよ。それで、えっと、その、、、いろいろあって、眠っちゃったんだよ。」

「いろいろって?」

「え?それは、んー、覚えてない久遠が悪い!」

なんか急に不機嫌になった秋葉に動揺が隠せない。

「え?何があったんだ。秋葉教えろよー。」

「ダメー。」

距離を取る秋葉を追おうとしたが、これが酒の力というものなのか、足がふらついてうまく追えない。僕は諦めて、ソファーに座ると、もう一つの疑問を口にした。

「さっき、僕に言っていた、どうして?ってのは何?」

秋葉の動きがピシッと固まったような気がする。

「えっと、夢なんだけどね、私は久遠に殺された。嫌な夢だなーって思って目が覚めて、久遠に聞いてみたんだよ。」

それを聞いて僕が今度は固まった。

 同じ夢を見るとは、本当に嫌なものだ。それがいい夢ならば問題ない。しかし、嫌な夢というのは本当に薄気味悪い。

「久遠は私のこと嫌いなの?」

 お互いの夢の内容はほぼ一致していた。唯一違う点は、僕の夢は他人の視点もあったということだ。

「そんなわけないだろ。僕は秋葉を殺したりしない。むしろ、この夢は何かの暗示かも知れないと考えるとどうだ?」

僕は話をそらそうと、秋葉の好きなオカルトの話に内容をすり替える。

「なるほど。そういう考えもあるわね。」

秋葉の目が悲しみから嬉々としたものに変わっていく。それを見て僕は安心した。

「ところで、秋葉はこんなに夜遅いのに、なんで僕の家にいるんだ?」

ふと思い出した素朴な疑問が、安心したからか不意に口からでた。

「え?えぇぇぇ!?本当に何にも覚えてないの!??」

「うん。」

「あれだけのことを私にしておいて?」

「え?」

「あ、今のは忘れて。」

「え?何やったんだよ僕は!?」

「だから、明日悲しみに暮れているであろう朝霞ちゃんに聞いてみるといいよ。」

どことなく秋葉は怒っているようだ。でも、僕は何をしたのか覚えていないから、どうしようもなかった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る