第21話 違和感2

 違和感のそれは僕が勝手に感じただけかもしれない。なにせ、秋葉とは思えない存在だとして、目の前にいるその存在を常識的に考えてみれば、それは明白である。ドッペルゲンガーなんてもの普通に考えて納得する材料ではないことはわかっている。

 しかし、何故だろう。僕にはそれが疑わざるを得ないなにかと認識している。じゃぁ、目の前にいる秋葉のような「モノ」はいったい何なのであろうか。思い過ごしなのだろうか。しろがねの村行きのバスに乗車して、隣に座る秋葉を見て僕は考えていた。

 いつものように透き通った白い肌。ピンクの瑞々しい唇に整った顔立ち。それでいて儚く見える涙黒子なみだぼくろ。そして、その奥に座る眼鏡の隣に座る須崎さんの胸と見比べてみる。やはり、完全に一致。

「おい、久遠。今、考えていることは何かな?」

視線を感じた秋葉が秋葉のように声を掛けてくる。なお、腕は抓られて痛い。

「え?秋葉、怒ってる?なんで?」

「バカなの?今、見比べたのは何?」

「僕が見比べたものとはいったい何のことかな?」

この返しに赤面する秋葉。くっそ可愛い。なんだこれ。いや、惑わされるな。図書館調査の時、秋葉はおっぱいという単語を簡単に口にしていた。となれば、やはり偽物。というか、腕が痛い。

「バカ。小さくて悪かったわね!」

「いや、大きい方だろ。つか、声がでかい!」

思いのほかバスは座席が埋まるくらいの乗車人数。しかも、カップルだらけ。腹が立つが、僕の状況を客観的に見ればカップルか。すまん、お前ら。僕は童貞の友人たちを思い返し、謝罪する。いや、僕も童貞なのだが、秋葉の発言にバス内に静けさと注目の視線が僕に集中する。

「大きさなんて関係ないよね?眼鏡?」

沈黙を破る須崎さんだが、その目が座っている。

「それより、辺鄙なところに行くバスなのに客多いよな。」

その眼鏡の発言に僕は救われた。秋葉と須崎が通路を挟んで互いに目を合わせて、

「「ホントだね。」」

と言った。話題はすり替えられたのだ。やはり、持つべきものは友達。

 長い道のりのバスの中。自然と僕以外のメンツは途中からいつの間にか眠ってしまっていた。何せ一面緑色の同じ風景。山道で代わり映えがない。話題も尽きてくるし、早朝起きが堪えたのだろう。

 そんな中、僕は隣で健やかに眠る秋葉の横顔をずっと眺めていた。だって、これが秋葉でないとするならば、本物はいったいどこにいるのだろうか。そもそも、ドッペルゲンガーとは何なのであろうか。それに、花火大会の後すぐに帰ったはずの秋葉が深夜2時にリビングで僕と話をした。その秋葉はいったいどっちで何の意味があるのか。それとも朝霞のいたずらなのか。

 僕は肩に秋葉の重みを感じながら、その秋葉のような存在に少し怖くなった___。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

オカルトってなんだっけ? 蒼穹 @A-soukyuu

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ