本作のヒロイン、沙優ちゃんがとにかくいい子なんです。
素はしっかり者のJKなのですが、やはり出会いの巡り合わせで、よろしくない人と関わったばかりに思考が残念な部分が散見されています。
が、ここも新たな出会いによって、改善されていきます。
先ほども記述した通り、元々がいい子なので、主人公吉田に影響されてもっと素敵な女性に成長していきます。
そんな吉田の周囲には、沙優ちゃん以外にも魅力的な人が居て、吉田繋がりでまた新たな出会いを得て、沙優ちゃんはまたいい方向に歩んでいきます。
(両)想い人であり、上司のふくよかなパイには反応するけど、沙優ちゃんの大きいパイには反応しない、素敵な会社人吉田の物語を是非、体験してみてください。
とても楽しく拝読しました。
登場人物の心情が嫌味なく素直に伝わってきてとても素敵な物語と文章でした。
オッサンの私ですが、どちらかと言うと沙優ちゃんや後藤さん三島さんなど女性サイドの目線がとても巧みで感情移入してしまいました。
皆、人には言えない孤独や過去を抱えていて、男の私も共感してしまいました。沙優ちゃんの父親機能不在の家庭環境や喪失トラウマなどもそうですが、他にも特に後藤さんの沙優に大人としてアドバイスしておいて自分の弱味は見せられず1歩引いてしまうところとか、三島さんの明るそうに見えても実は凄く人間関係に臆病で取り繕っているところとか、凄く人間ぽくてリアルかつ共感してしまいました。
吉田さんはそんな孤独で不安な心を救ってくれる文字通りヒーローだったと感じます。家出少女と泊めてあげるオジサンという危うい関係のテンプレートは一見すると男性向け作品にも見えますが、その実は孤独な女の子が想い描く理想を描いていたようにも感じます。
家出少女が犯罪に巻き込まれる事件や報道はありますが、家出が何故起きたのか、そういった孤独な青少年の背負う背景には社会は無関心なのではと感じます。
プライバシーという高い塀に覆われている家庭という閉鎖空間で、孤独が作り出される仕組みというのは中々見え辛いものですが、機能不全の家庭がこれ程ある事を考えるともう少し彼ら彼女らの目線に立って物を考えられる大人が増えても良いのではと感じてしまいます。吉田の「お前らがやれば良かっただろ!」という言葉は、別に女子高生を匿まえと言っているわけでなく、私たち大人が不都合な事を見て見ぬふりをするそんな無責任さを糾弾しているようにも感じました。
そんな世の中を作っている大人の1人として反省をしながらも、自分はせめて自分の子供にはそんな思いはさせまいと誓いながら読み耽ってしまいました。
この作品は家出少女を消費する男の目線というよりは、やはり孤独に苛まれる少女の目線であり、
総じて感じたのは、大変な思いをした沙優ちゃんは最後には報われて欲しいと強く感じ、また吉田さんには男だけど惚れてしまったという、そんな作品でした。