第11話 花火大会2

 なぜ、僕の部屋に秋葉と須崎さんがいるのかは、すぐに解決した。

「勇揮ってば、またそんなゲームして自己発電?」

正座して秋葉と須崎さんに説教を受けているところに、姉が入場した。そういえば、大学も夏休みというものがあるんだった。

「姉さんか。すべて理解した。」

 久遠夕花くおんゆうかは僕の4つ上の姉である。一言で表すなら、隠れヤンキーだ。清楚な見た目とは思えない中身から僕はそう思っている。なぜこのように育ってしまったのかは、一緒に生活していたはずの僕にもわからない。

「久々に家に帰ってきたら誰もいないし、テレビ見てたら可愛い子が2人も訪ねてくるから入れちゃった。あ、あと眼鏡君はパシらせた。」

「オーケー。わかった。とりあえず、姉さんは服を着よう。」

「シャワー浴びたのはいいんだけど、服が無くって、勇揮の貸してもらおうと思って。」

「いや、なんで客を招き入れてシャワーなんだよ!?」

と、姉と揉めていると、眼鏡が帰ってきたようだ。バスタオル1枚の姉の後ろにやってきたかと思うと、パシられて購入してきたであろうものを廊下に落とした。

「眼鏡君。ありがと。」

姉が振り返りそう言うと

「こちらこそありがとうございます。」

と、眼鏡は感涙にむせびながら、僕に親指を立てたサインを送った。

すると、

「よし、あの眼鏡、叩き割りましょう。」

須崎さんが唐突に物騒なことを言い始めた。眼鏡には悪いと思ったが、僕の窮地を脱するタイミングはここしかないと判断した。

「援護する。」

僕は痺れる足に鞭を打って立ち上がる。秋葉は、PCゲームの取り扱い説明書をおもむろに読み始めた。その行動は異様である意味ホラーだった。姉は僕の部屋のタンスを漁るや、Tシャツやらジャージやらを物色している。

 僕の部屋のこの状態はカオスでしかなくなっていた。ここから先は、まさに、宇宙形成に似ていた。ビックバンから、カオスに動き回る素粒子がまとまっていく。そうして、銀河系が形成される。命ある星の誕生はもうすぐだ。

 結局、収拾がついたのはそれから、だいぶ経ってからだった。眼鏡は本当に眼鏡を失って、神崎になっていた。その瞬間を例えるのであれば、赤子の手をひねるような、そんな感じだった。しかし、神崎は幸せそうな顔をしていたので、よかったと思った。

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