第二十四回 警部は語る・その十四
それこそ安壱の屋敷で、修と正が鉢合わせすることまであったそうだ。そんな二人揃った折に、安壱は二人に告げたとか。
「財産は全て弟の
この話は、遺言状を管理している弁護士にも確認済みだ。まあ法律上『一銭もやらん』は無理だろうがね。
しかし、これで、貧乏人の豪次まで殺された理由が、ようやくわかった気がした。以前に修が「叔父や父が亡くなってくれて助かった」と言ったのを聞いて、微妙に気になっていたわけだが、それもすっきりした。
借金返済のためには、豪次にも死んでもらう必要があったわけだ。さもなければ、借金を返せるだけの遺産が手に入らないからな。そう考えると、豪次は安壱に殺されたようなものかもしれんな、うん。
こういう事情だから、修と正の二人には、安壱と豪次を殺す明確な動機があったわけだ。
一方、この二人以外には、動機らしき動機を持つ人物は見当たらなかった。安壱と豪次に共通の知人はなく、それぞれの知り合いの中にも、特に彼らを恨む者など見つからなかった。
したがって。
次に私がやるべきことは、修あるいは正のアリバイを崩すことだった。
まず考えたのが、次のような推理だ。
「犯行現場は、死体が発見された場所とは別のところだったのではないか」
もしも山田原豪次が殺された場所が、修の同窓会へ行くルート近辺ならば……。修は同窓会への行き帰りの途中で豪次を殺害し、後日死体を豪次のアパートへ運ぶことも可能かもしれない。
もしも山田原安壱が殺された場所が、正の通勤ルート近辺ならば……。正は会社帰りに途中で安壱を殺し、後日死体を安壱の屋敷へ運ぶことも可能かもしれない。
……しかし、こうした推理は、検視官やら鑑識やらに真っ向から否定されてね。彼らに言わせれば、死体の痕跡などを調べた限り、犯行現場は発見場所で間違いないそうだ。
おや、
何か言いたそうな顔をしているな? ここまでの話を聞いて、何か思いついたのか?
いやいや、口を挟む必要はないぞ。君はそのまま食べていたまえ。君の考え、私が当ててみせようじゃないか。おそらく君は……。
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