第十五回 警部は語る・その七
そこまで
「中座して、すいません」
「構いませんよ。こちらとしても、商売の邪魔するつもりはありません」
それに、ある意味、良いタイミングで戻ってきてくれた。
「ちょうど修さんの話が終わったところでしたから」
「あら。もう主人は開放してもらえるのですね?」
人聞きの悪いことを言う。
何も逮捕したわけでも、拘束しているわけでもないのに。
「いや開放も何も……。とりあえず、香也子さんの二十二日について、聞かせてもらえますか?
香也子の二十二日は、一字一句記すのが馬鹿らしくなるくらい、二十三日と酷似していた。
つまり、閉店までは店で働き、その後は二階へ上がり、食事をしたり、
こうした話を聞き出したところで、私と部下は、修の店『
その後。
近所の買い物客に聞いて回ったのだが、両日とも、夕方遅くまで修と香也子が店にいたのは確かなようだった。また夕方以降、閉店までは香也子が一人で店を切り盛りしていたのも、間違いなかった。
もちろん『ずっと』二人を目撃していた者などいない。それぞれの目撃証言を繋ぎ合わせていくと、誰にも見られていない空白の時間は生まれる。しかし、浮かび上がってきた空白の時間は、
そうそう、言い忘れていた。最初に香也子の容姿を説明したところで言うべきだったが、彼女の手の大きさは、標準的な女性のものだ。むしろ、小さめで可愛らしく感じたくらいで……。まあ、だから、彼女には今回の絞殺は無理だな、と私は思った。これについては、部下も同意見だったよ。
一応、通話記録も当たってみたが、香也子と理恵の二人が長時間、電話で語り合っていたのも事実だった。まあ、それこそ二人が示し合わせて受話器を上げっぱなしで席を離れても、通話記録としては『電話中』という扱いになるわけだが……。今も言ったように、香也子は犯人とは思えなかったからな。
ああ、そうそう。
修の同窓会の件についても、確認したぞ。
同窓会には最初から最後まで参加していたし、場所も修の家からは、豪次のアパートと反対方向。行く途中で、あるいは帰りに寄り道をして、アパートまで殺しに行く……なんて芸当は、時間的に不可能と判断できた。
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