第六回 居酒屋にて・その一
「興味あるかい? ならば場所を移そう。どこかで軽く呑みながら……」
俺たちは、駅前の居酒屋に向かった。
何軒かの店が並ぶ中、
「ここでいいかな」
警部が適当に選んだ店に、俺たちは入る。
「まずは生ビールだな。君も同じでいいだろう? それから……」
警部はメニューを見ながら、つまみになりそうな料理を注文していく。
俺は任せることにしたが……。
実のところ、転生前の俺は、黒ビールが好きだった。しかし、この辺りの居酒屋では、黒ビールを見かけたことがない。
これは時代の違いなのか、あるいは場所の問題なのか。
転生前の俺は、1985年当時まだ未成年だったから、この時代のビールに関する知識など皆無である。まあ未来人の知識なんて、そんなものだ。この1985年という時代では、俺の転生前と違ってネットもないから、調べるのも簡単じゃないしな。
いやネットというのは『インターネット』の略なんだけど、『インターネット』と言われても、1985年の皆さんには
そろそろ、モデム付きのパソコンが売り出される頃だろう? 転生前のパソコン雑誌の裏表紙で1985年頃に、なんちゃらTRっていう新型パソコンが広告されていたのを見た覚えがある。最初は「パソコンに役立たずの電話機がくっついた」程度にしか思えないだろうけど、あれが発展して便利なシステムになるのさ。俺の時代の1999年でも、まだ電話代が結構かかる
俺も専門家じゃないから詳しくは説明できないので、とりあえず今のところは「子供の頃に漫画で見た未来予想図は実現しないが、まったく別の方向性に発展して、未来は便利になる」くらいに思っておいてくれ。
話を戻そう。
警部が一通り注文し終わったところで、俺は口を開いた。
「警部が自ら姉のところに出向くなんて、珍しいですね」
この肉体の記憶によれば、基本的に、姉を事件に引っ張りこむのは弟の役目であって、警部自身が姉に泣きついたことは一度もないらしい。
そもそも、姉が関わると事件は解決するものの、なぜか犯人は必ず死んでしまうため、警部の手柄にはならないのだ。警察関係者の中には「
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