約束

あなたが

真っ白い部屋でたくさんの管と針で

機械に繋がれていたあの日

お医者さんはね

「祈るしかありません」

って言ったの


あなたのお父さんは

あなたの眠るベッドに突っ伏して

こう言って泣いていたよ


俺が代わりに死ぬのに

俺がこの子の代わりに死ぬのに


わたしが今まで見てきた中で

そのときがいちばん

あなたのお父さんはかっこよかった


わたしは、お母さんなのに

かわりに死ぬって言えなかった

あなたの妹がお腹にいたから


だから、わたしは

まだ神さまの近くにいて

この世の光を見ていないあなたの妹に頼んだの

どうかお姉ちゃんを助けてくれるように

お願いしてって


おじいちゃんもおばあちゃんも

近所のおじさんおばさんも

みんなみんなが

あなたのために祈った


そうして

あなたは助かり、妹も元気に生まれてきた

これは何よりもうれしいこと


そしてね

わたしはもう一つ、あなたの妹に

神さまへお願いを伝えるよう頼んでいたの


無事に赤ちゃんを産んで

おっぱいを卒業しておむつまでとれたら

あなたを助ける代わりに

わたしの命を持っていってくださいって


だから、もう祈らないで

こうなることは神様との約束だったんだよ

これでいいの


姉妹仲良くね

お父さんを大事に、優しくしてあげてね








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