約束
あなたが
真っ白い部屋でたくさんの管と針で
機械に繋がれていたあの日
お医者さんはね
「祈るしかありません」
って言ったの
あなたのお父さんは
あなたの眠るベッドに突っ伏して
こう言って泣いていたよ
俺が代わりに死ぬのに
俺がこの子の代わりに死ぬのに
わたしが今まで見てきた中で
そのときがいちばん
あなたのお父さんはかっこよかった
わたしは、お母さんなのに
かわりに死ぬって言えなかった
あなたの妹がお腹にいたから
だから、わたしは
まだ神さまの近くにいて
この世の光を見ていないあなたの妹に頼んだの
どうかお姉ちゃんを助けてくれるように
お願いしてって
おじいちゃんもおばあちゃんも
近所のおじさんおばさんも
みんなみんなが
あなたのために祈った
そうして
あなたは助かり、妹も元気に生まれてきた
これは何よりもうれしいこと
そしてね
わたしはもう一つ、あなたの妹に
神さまへお願いを伝えるよう頼んでいたの
無事に赤ちゃんを産んで
おっぱいを卒業しておむつまでとれたら
あなたを助ける代わりに
わたしの命を持っていってくださいって
だから、もう祈らないで
こうなることは神様との約束だったんだよ
これでいいの
姉妹仲良くね
お父さんを大事に、優しくしてあげてね
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます