どちらかといえば、困っています

僕は生まれてすぐに

兄弟たちと一緒に段ボール箱に入れられて

道端でぷるぷる震え、鳴いていたのだそうです


あなたが僕を見つけて

家へ連れて帰って

ミルクを飲ませて育ててくれました

兄弟たちは遠くの街へ引き取られていった、と聞きました


フリスビーで遊べる公園のベンチで

水筒のお茶を飲みながら

あなたが言いました


「もうすぐきみの兄弟が全員来るよ、

感動の再会だね

みんなで写真撮ろうね」


そんなこと言われても

僕にとってはよくわからないし

どちらかと言えば困っています


僕は兄弟がいたことを覚えていません

本当のお母さんすらもう記憶の彼方です


あなたは新しい服を着て

ご自慢の一眼レフを持って来ています

あなたのほうがよほど楽しそうです


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