かき氷屋さん、開店

ガレージセールでいいものを見つけた

しまいっぱなしにされてた家庭用かき氷機


箱は汚いし古いけれど

新品で刃も鋭いし

ハンドルを回せばしゃきしゃき動く


さっそく買って家路をたどる

冷凍庫の氷がたっぷりあったことを思って

独りで変なふうに笑いながら


思い立ってのことだから氷蜜なんてない

薄めて飲むジュースの素

ジャムをお湯で緩めたピューレ

濃く淹れてお砂糖を山ほど溶かした紅茶やコーヒー

春、イチゴを食べるために使って余ってた練乳

そんなものをテーブルに並べて


その真ん中にかき氷機を置いて

ガラスのお鉢もスタンバイ

もうそこは小さなかき氷屋さん


ほら、お客さんが集まってきた

私の手元に憧れの目を向け

ふわふわの氷の鉋屑が器に溜まるのを

この上ない期待を込めて見つめる

真剣に選んだ氷蜜もどきをかけて

小さなお口へスプーンで運び

おうちでこんなにおいしいものができることに歓声


そうよ

これこれ


私はかき氷よりも

この瞬間が味わいたかったのよ


お客さん

おかわりたくさん

ありますよ!

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