祈り
わたしの父は、行ってきます、と
いつものように出かけた
わたしの母は、行ってらっしゃい、と
その日はちょっと手が離せなくて
リビングで見送った
そしてその日、父は帰らぬ人となった
母は泣き崩れていた
なぜ、あのときちゃんと
父を見送りに出なかったのだろうと
だからわたしは
どんなに忙しくても
喧嘩をして憎たらしく思っていても
毎朝必ずあなたを玄関先まで見送る
この別れがあなたと会える最後のときかも
しれないのだから
いってらっしゃい、気を付けて
このわたしの言葉に
どのくらいの祈りが籠っているか
あなたはきっと知らないだろうな
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