第18話
あのメールをもらった日からしばらく経った。あれからメールのやりとりが続き、久々に会うことになったのだ。メールだけをみると、少しは元気を取り戻したようで、ただの同級生に戻った感覚だった。だから会うことにも久しぶりだしと、軽い気持ちだった。とはいえ中学卒業以来会っていない。少し緊張した。
今日は僕の部屋で勉強を教えてもらうことになっていた。藤川は中学の時から英語が得意で助けてもらおうと僕から部屋で勉強することを言い出した。優美も家には来たことない。彼女より先に別の女をと少し思ったが同級生で勉強するだけだしと、あまり気にしなかった。時計を確認すると午前10時、藤川も家に来るのは初めてなので迎えにいくことになっていた。
「そろそろ行くか。」
そう呟きながら、立ち上がった。
自転車で中学に向かう。3年間通った通学路、懐かしいなと感じているとすぐに着いた。
「……よう、久しぶり。」
すでに藤川は待っていた。3年ぶりに会うが何も変わっていなかった。安心した。
「遅い。」
家に着くと、親父やお袋が騒いでいる。理由は家に女の子を連れてきたからだ。家で勉強するとだけ言っていたから、まぁわからなくもないが、女子連れてきたぐらいでうるせぇなと心の中で呟いた。部屋に入ると、藤川とは机を挟んで対面になるように座った。部屋に入ってすぐ、お袋がジュースやお菓子を持ってきた。腹立つ顔をしながら。
「ゆっくりしていってね。」
「はい、ありがとうございます。」
藤川がお礼を言うと、お袋は出ていった。その背中からでも腹立つ顔をしているのがわかった。
少しゆっくりした後、普通に勉強を教えてもらう。パラパラと問題集をしたノートを藤川が確認する。
英語は自分で言うのをアレだが中学の時はそこそこできたはずだった。しかし、高校に入り完全に分からなくなっていた。部活引退の時も本当にギリギリだった。顧問の先生が英語担当で部活での頑張りを見てくれていなければ、欠点で試合には出してもらえてなかっただろう。本当に感謝だ。
「アホすぎん?」
「な……!」
喋り出したかと思えば、完全にガチ引きしていた。
「……そんな引く?」
「アホすぎる。恵一がそんなできないと思ってなかった。」
名前で呼ばれた。少し違和感を感じたが、アホと言われたことのショックが大きく、そのまま流してしまった。
「うるさいなぁ、だからこうして勉強してるんだろ。」
緊張は溶けていき、徐々に慣れてきた。しばらく真剣に勉強したり、普通に話をしたり、気づけば夕方になっていた。
「だいぶ分かってきたわ。」
「本当?」
そう言いながら、藤川はいつの間にか隣に来ていて、僕の顔を覗き込んだ。距離が近くなり、思わずドキッとしてしまう。
「ちょっとトイレ行ってくるわ。」
そう言って藤川と距離を空ける。
「びっくりした……」
ドキドキがおさまるのを待って、部屋に戻る。戻ると藤川はベッドに寝転がり、置いてあった漫画を勝手に読んでいた。
「あ、帰ってきた。」
「勝手にベッドに寝るなよ。」
「いいじゃん。」
藤川が起こせと手を伸ばしてくる。僕はなにも考えず、その手を掴んだ。すると手をぐっと引っ張られた。僕は藤川の上に覆い被さるように倒れてしまう。
「なにして……」
藤川と目があう。起きあがろうとしたが、藤川は手を僕の首にかけて唇を重ねてきた。
突然のことに何が起こったのか理解できなかった。
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