第12話
「行ってきます。」
彼女にフラれた次の日、いつも通りに朝はやって来て、学校には行くしかなかった。絶望するとなにも喉を通らないと聞いていたが、現実は昨日の晩御飯も今日の朝食もしっかり食べたし、ちゃんと美味しかった。学校へ着くと大山さんには会わないように気にしながら教室に入った。授業が始まってしまえば会うことはないだろう。
「孝太、おはよ。」
「おお、恵一、どした?元気なさすぎじゃね?」
「はは、まぁいろいろね」
「なるほど。」
孝太はすぐに察した様子だった。さすがは長い間一緒にいるだけのことはある。孝太はこれ以上深く聞いてくることはなかった。
ご飯はちゃんと味はしたが、時間が経つのはすごく長く感じた。なにをしていても大山さんのことを考えてしまう。もっと2人で出かけたりしたかった。授業が終わり、部活の時間だ。行く気にはなれなかった。
「恵一、部活行くか?」
「悪い、今日はやめとくわ」
それだけ言って教室を出て行った。先輩たちに見つからないようにこそこそと駐輪場のところまでやってきた。そこでふと体育館に目を向けると大山さんが体育館に入っていくのが見えた。
「はぁ……」
大きくため息をつき、学校を出た。
家に帰ることもできないので、学校近くの公園で時間を潰す。ベンチに座り、携帯を眺める。大山さんとのメールを読み返す。メールだけでなく、出会った時のこと、大会で大山さんが泣いていた時のこと、今日の体育館へ入っていく姿、いろんな思い出、姿が頭の中を駆け巡る。気づいたら涙が頬を流れていた。その涙を拭うでもなく、止めようとするでもなく、人目を気にせず泣き続けた。ベンチに座り、泣いている姿を見て、公園で遊んでいた子は変な奴だと思っただろう。遊んでいた小さい子が声をかけてきた。
「大丈夫?なんで泣いてるの?」
見たところ、まだ小学校にも行っていない女の子。
「なんでもないよ。ありがとう。」
女の子は走っていってしまった。声をかけられたおかげで涙は止まっていた。その後もベンチに座ったまま、なにをするでもなく時間が過ぎていった。気づくと夕方、部活も終わり、多くの生徒がこの公園沿いの道を通る。誰かに出会う前に急いで家に帰った。家について部屋に戻るとメールが来ていた。
「青澤先輩だ。」
青澤先輩は一個上の先輩で大山さんと同じ中学だったはず。僕らが3年になってからは会うことも無くなったので連絡することも無くなっていた。
青澤:しずかと付き合って1週間で別れたんだってね。
僕:お久しぶりです。なんでそれを知っているんですか……
青澤:しずかから告白されたって電話がきたの、それで随時話は聞いてた。それで昨日別れたってことも連絡もらった。
僕:そうだったんですか。僕のなにがダメだったんでしょうかね。
青澤:しずかは橘のこと本当に好きだったと思うよ。でも、一個下に橘ことが好きって子がいて、その子からしずかは相談を受けてたみたいなの。だから相当悩んだと思う。でも自分の気持ちに素直に付き合うことを決めたんだよ、でもなにも知らないその後輩ちゃんはすごく相談してくるもんだから言い出せなかったんじゃないかな。しずかの性格わかるでしょ?1週間悩んだけど、自分が引くことを選んだみたいね。だから、しずかのこと怒ったり、恨んだりしないであげてほしい。
僕:教えてくれてありがとうございます。
僕はそれだけ返信して青澤先輩とのメールを終わった。真相を知って僕はなんともいえない気持ちになった。好きならそんな後輩のことなんか気にしなきゃいいじゃんとも思ったがその気持ちはすぐに消えた。1つ気になることができた。後輩の中に僕のことを好きな子がいる?僕はモヤモヤした気持ちを必死に抑え込もうと布団の中に潜り込んだ。
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