第13話
「大山さん、おはよう。」
朝の通学中、通学路で大山さんを見かけた。僕は急いで追いかけて、挨拶をした。
「おはよう。」
大山さんも意外に普通に挨拶を返してくれた。学校までの5分間、僕らは久しぶりにゆっくり話しながら学校へ向かった。話の中で青澤先輩に話を聞いたことも話をした。
「その後輩、誰なん?」
「いや、それは言えんよ。」
「その後輩のせい?で僕フラれたんだけど。」
「そのうちわかるよ、すっごい毎日話してくるから。カッコいいんだって。」
「複雑だ……」
こんなにすぐに元通りになれたことも、僕のことを好きな人がいることも信じられなかった。それでも、大山さんと話せていることは嬉しかった。この付き合う前の距離感が1番いいんだろうな。なんだかんだ話をしていると学校についた。大山さんとは、下駄箱で別れた。
「お、恵一。もう大丈夫なのか?」
教室には孝太がすでにいて、僕の顔を見るなり心配で話しかけてきた。孝太には昨日起こったこと、今日の朝のことを全て話した。
「いや、どういう状況だよ。フラれたと思ったらモテ期きてんじゃん。」
「本当かどうかわからんよ?誰かわからんし。」
少し考えてみたが、本当にそんな後輩がいるかどうかも分からない。大山さんがフる理由を作っただけかもしれない。これまでの部活でそんな後輩がいる気配が全くしない。今年入ってくれた後輩を思い返してみる。全くわからない。授業が終わり、部活の時間になる。急いで体育館へ向かった。1番に体育館に入り、一人一人入ってくる後輩を観察した。その中で気になったのは山田さん。身長は低く、大人しくあり、笑顔が可愛い。中学からバレーをしている頑張り屋だ。山田さんだけが唯一、体育館で僕を見て、ハッとした表情を見せていた。もしかしたら山田さんなのか?その日の部活は山田さんをチラチラ見ながらだったが、練習中はとにかく真剣でそんな素振りは全くなかった。今日観察しただけでは、わからなかった。
1週間が経った。大山さんとはすっかり付き合う前と元通りになっていた。嬉しいのやら、悲しいのやら。気になっていた後輩のことは今もわからないままだ。もう気にすることもなかった。明日は練習試合がある。そこに向けて集中していた。
「集合ー!」
練習が終わり、幸太が集合をかける。
「明日の練習試合、最後の大会に向けて調整するにはいい機会だ。あの強豪の石神高校も来る。絶対勝つぞ!」
「はい!」
気合を入れて、今日の練習が終わった。僕はまだ知らない。明日の練習試合であの人から連絡がくることを、その連絡から少しずつ人生が変わっていくことを。
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