出会い
第1話
地獄の初恋事件から数ヶ月が経ち、もう誰も春香とのことをいじってくる奴はいない。春香も少しずつではあるが僕と話してくれるようになっていた。
「この前のテストどうだった?」
春香は何もなかったかのように聞いてくる。
「…んっと…まぁまぁだったよ」
久しぶりに急に話しかけられた僕はドキドキして言葉に詰まる。
自分が惚れられていると知った当初はそんなに人生で引くことがあるだろうかと思うほどにドン引きしていた。1番気まずかったのは給食の時間だ。
僕らの中学校は給食の時に隣同士、机をくっ付けてみんなで食べましょうみたいなシステムだった。席が隣同士だった僕らは、どちらも机を動かさない。いつまでもこうしてるわけにもいかないので、僕から机を動かした。その時、春香はガタッと音を立てて、僕と机をくっつけないように自分のほうに机を引いたのだ。僕のその時の気持ちは言うまでもない。
そんな地獄のような日々から考えるとよく元に戻れたものだ。そして、また席替えの時間がやってきた。
今回は春香とは席が離れた。
「…よかった」
僕は誰にも聞こえない声でボソッとつぶやいた。
今回、僕の隣の席には
あれは忘れもしない、僕らが1年の時だ。クラスが一緒だった僕らは日直だった。日直は2人で授業の挨拶、黒板消し、学級日誌、いろいろ仕事がある。その中でも学級日誌は当時からどっちが書くか戦争ものだ。ふたりで半々で書く奴らもいれば、1人でどちらが書くか決めて任せっきりな奴らか人それぞれだ。藤川さんに日誌を任せっきりにしていた僕は突然キレられた。藤川さんも相当溜めていたんだと思う。給食の時間、見たこともない顔と気迫に僕は完全に大敗してしまった思い出がある。
「…藤川さん、久しぶりやね」
「よろしくね」
藤川さんはすっかり2年前のことは忘れている様子だ。藤川さんとはあまりそれ以来話していなかった。
授業が終わり藤川さんが不意に話しかけてくる。
「
「ん?持ってないよ」
藤川さんのいきなりの問いかけに戸惑いながらも答えた。僕がいた中学校では携帯を持っている方が珍しかった。僕は親の携帯を使って数人の友達とは連絡を取っていた。
「でも、親の携帯で連絡は取ったりしてる人はいるよ」
「そうなんだ、じゃあこれ私のアドレスと番号だから」
藤川さんはノートの端に番号とアドレスを書いて、破って渡して来た。こうして僕たちは連絡先を交換した。
家に帰ると、さっそく母親に携帯を借りて藤川さんのアドレスを登録した。
僕:こんにちわ。アドレス登録したよ。
藤川:ありがとう♪明日も学校でよろしくね。
他愛もない会話だけをした。その日の夜、藤川さんに会うのを楽しみにして中々寝れなかった。
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