カレーうどんと猫とトマト

ミヤザワユウ。

プロローグ

午後1時20分、チャイムが各教室に響きわたる。僕は教科書とノートを出して教室で先生を待つ。中学3年生の2学期、受験を控え、教室の雰囲気もどんどん変わっていった。

ガラガラッ。

教室のドアが開いて先生が入ってくる。給食が終わった後の理科は地獄だ。面白くもない話が延々と続く…

授業中、僕は無意識に隣の席を見ていた。隣には幼なじみがいた。春香はるかは幼なじみと言っても小1で転校してきた僕にとって小学校から同じというだけだ。この間の席替えで2回連続隣の席になった時は嬉しくて、またお前かよと言いながらも心の中でガッツポーズをしたのは記憶に新しい。

「…なんだよ。前見ろ」

春香が僕の方を見て、持っていたシャーペンで黒板を指差して言った。

「相変わらず口が悪いな」

「話聞いとかないと、わかんないよ」

春香は前を向いて面白くもない先生の話を聞き出した。僕は春香にいつ告白しようかと少し前からそのことばかり考えていた。幼なじみであったが好きになったのは中学1年のときだ、吹奏楽部に所属した春香はクラリネットを吹いていた。僕が初めて見たのは校内の定期演奏会だった。中庭の前列で座っていたその幼なじみは見たことない真剣な目で綺麗な音色で奏でていた。

気づいたら僕はその演奏を聞き入っていた。幸福感でいっぱいになった。これまで幼なじみだった僕らの関係は終わりを告げ、春香は初恋相手になった。

それから2年、何も出来ず3年生になってしまった。

授業が終わり、今日も告白できないまま1日が終わってしまった。どうすればちゃんと想いを伝えられるか考えた。幼なじみとしてのこれまでの関係をどうすれば壊せるかを。そして僕は手紙を書くことを選んだ。ラブレターというやつだ。明日こそは告白しようと初めて書いた。


次の日、僕はラブレターを大事にカバンに入れて登校する。3階まで一気に駆け上がり教室のドアを開けた。

「おはよ」

挨拶してもいつも返ってくる挨拶が返ってこない。みんなの様子がおかしいことに僕はすぐに気づいた。クラスの1人が話しかけてきた。

「お前、木戸のこと好きなの?」

春香のことだ。

「えっ…?」

僕は顔面蒼白になっていたに違いない。なぜ知っているのかと驚きもあったが、片思いをしていることを知られたのが恥ずかしかった。

「そんなわけないよ、小学校から同じなのに」

僕はできるだけ冷静を装った。その日生きた心地がしなかった。クラスだけでなく、学年全員に知れ渡っていたのだ。

聞けば、友達の1人が春香の親友に話していたのだ。春香の親友、陽菜ひなは口が軽くて有名だった。僕が登校する前に陽菜は吹奏楽部全員に話していた。

当然、春香にも伝わる。僕が片思いをしていると知った春香はその日から口を一切きかなくなった。こうして僕の初恋は互いの友達によって強制終了された。


そこから数ヶ月が経ち、どん底の僕は1人の女性に出会う事になる。

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