第4話
藤川さんはクラスの中に好きな奴がいるらしい。僕は誰かなんとなくわかっている。それは東くんだ。僕と同じ部活に入っている、僕の1番の友達だ。だから僕にメールをして探っているに違いない。
「間違いない」
少し前に流行ったギャグが思わず出る。告白してみたらとアドバイスしておいたが、藤川さんはどうするんだろう。
「橘くん、おはよ」
「藤川さん、おはよう」
いつも通りの時間が過ぎていく。
「この間、東がさ、面白いアニメがあるって教えてくれて、藤川さんはアニメとか見てる?」
藤川さんに東の情報を刷り込んでいこうと考えた。
「私もアニメ見るよ、そのアニメも見てる、面白いよね」
よし、成功だ。二人の共通の話題が出来たじゃないか。
「橘くんは見てないの?」
「え、僕?あんまり見ないかな、ほかの番組見てることが多いかな」
「そうか、また見てみてよ、面白いよ」
いやいや、僕のことじゃなくて、東とその話をすればいいのに。
「あ、東!藤川さんも見てるみたいだよ、あのアニメ」
近くにいた東に話をふった。
「お、藤川も見てるのか、この間の話は良かったな」
「そうだね、すごく良かったね」
よしよし、これで俺の役目は完了だ。そこから数日は様子を見た。
「好きな人とはどうなったの?告白できた?」
「……!!」
藤川さんは驚いた顔をしている。面白い人だな。
「…おはよ。どうしたもこうしたも進展はなにもないよ」
なぜか藤川さんはこっちを睨んでいる。ように見える。
なんでだ、睨まれてる……この間も東と話すチャンスを作ったのに、何も無かったのかな。気になったが聞くことは出来なかった。
「告白しても付き合える自信がないんよ」
「前は悩んでるって言ってたけど、今はそいつのことだけが気になっているんだね」
「…あぶなっ」
「え?」
あぶなっ?何が危なかったんだろう。藤川さんは不思議な人だ。
「あ、そうだ東がこの間藤川さんって話したら面白い人なんだねって言ってたよ」
僕は沈黙に耐えられず、東の話をする。そして帰ってメールで話をした。
次の日、気になっていたことを藤川さんに聞いてみた。
「どんな奴なの?このクラスなんでしょ」
「普段からよく話すんだけど、あんまり自分のことだとは思ってないみたい」
藤川さんがよく話す相手か、東じゃないのか?藤川さんが東と話しているところは正直全然見ない。東じゃないのか?頭の中に?がいっぱい浮かんできた。藤川さんは普段誰とよく話しているんだろう。
「もっとアピールが必要なんだな」
「結構言ってるつもりなんだけどな……」
藤川さんの表情は少し呆れた様子だ。
「応援してるよ」
そう言って会話を終えた。東じゃなかったとしたら誰なんだろう。藤川さんが普段よく話しているのは、クラスの女友達と僕くらいだと思う。
え、僕?いやいやそんなはずない。一瞬よぎった答えをかき消した。
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