第3話
「あー、言っちゃった」
メールを終えて、一息ついた。橘くんにまさか言うことになるとは思わなかった。しかもなにも知らずに告白したら?などと言ってきやがった。
「くそ……本当に告白したら困るくせに」
何も知らない橘くんを少し恨んだ。でもこれはチャンスかもしれない、少しずつ橘くんに私が橘くんのことが好きだと気づかせてやる。私は燃えた。決意を新たに眠りについた。
「橘くん、おはよ」
「藤川さん、おはよう」
昨日の決意とはうらはらにいつも通りの時間が過ぎていく。
なにか手を考えないと……このままだと橘くんが気づくはずがない。
ここからしばらくなにも起こることなく数日が過ぎた。だが、その日は突然やってきた。
「好きな人の話はどうなったの?告白できた?」
「……!!」
橘くんが朝から顔を見るなり、いきなりクリティカルヒットを決めてきた。
「…おはよ。どうしたもこうしたも進展はなにもないよ」
この人は…人の気も知らないで、お前だよ、私が好きなのは!!
全く自分のこととは思っていないんだろうな……
少し悲しくもなったが、気づけと言うのも酷な話だと言うこともわかる。
「告白して付き合える自信がないんよ」
「前は2人のどっちが好きかで悩んでたのに、今はそいつのことだけが気になっているんだね」
橘くんが満面の笑みで話す。
「自信持てばいいのに」
それを聞いて思わず、私は言いそうになった。好きです。私が好きなのは橘くんだよ。
「あぶなっ」
「え?」
「いやいや、自信なんて持てないよ」
結局、橘くんに気づかせることは何も出来ないまま話題は別な事に変わった。そして、その後も何もできないまま家に帰って、いつも通り橘くんとメールで話をした。
次の日、また向こうから話題がふられてきた。
「どんな奴なの?このクラスなんでしょ?」
相変わらず能天気な顔をしている。そういうところも好きなのだけど、さすがに鈍感すぎると悲しい。
「普段からよく話すんだけど、その人はあんまり自分のことだと気付いてないみたい」
思ったことを素直に口にする。それを聞いていた橘くんはそいつは大変だなと、ひどいやつだなとも言ってくれた。あなたのことだけども。
「もっとアピールが必要なんだな。そいつが気づくためには」
「結構言ってるつもりなんだけどな……」
「そうなんだ、まぁ、応援してるよ」
橘くんは私が告白したらどうするんだろう、考えてくれるのかな、それとも自分のことだとは1ミリも思っていないのかな。そう考えるとなかなか動き出せない。
毎日考えてしまうのは、本当に好きだからなんだろうな。
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