第20話
カラオケに来るのは本当に久しぶりだった。部屋に入ると2人分ドリンクバーへドリンクを取りに行く。
「本当に良かったの?」
ドリンクを取り終えて戻ると、優美が荷物をソファに置きながら、改めて確認する。
「ちょっとくらい大丈夫だよ。」
「ありがと。」
突然のお礼にキョトンとなった。
「私が言い出したからでしょ?」
「僕も息抜きしたかったから行きたい場所がカラオケとかで逆に良かったよ。」2人で久しぶりのカラオケを楽しんだ。彼女は歌が上手い。聞いていて心地が良かった。
「そろそろ帰ろうか。」
気づけば3時間歌いっぱなしで外もすっかり暗くなっていた。
「楽しかったね。」
優美の歌声を思い出しながら駅へと向かう。駅に着くと電車がちょうど来た。
「やばい、電車きた。じゃあまた明日。」
優美が急いで電車に乗ろうとする。
「優美。」
電車に乗ろうとする彼女を呼び止めて腕を掴んでキスをした。
「また明日。」
彼女は何も言わずに電車に乗って行ってしまった。
「あー……やらかしたかな。」
普段なら絶対にこんなことしなかったであろう。何故か体が勝手に動いた。そして、頭の中に思い出したのは、昨日の藤川とのことだった。
しばらくして電車がきた。電車の中で優美にメールをする。
僕:今日は楽しかった。また息抜き付き合ってね。帰りのことはごめん。
すぐに返信が来る。
優美:今日は謝ってばっかりだ。私は嬉しかったのに。手を繋いでくれたことも帰りのそれも。
メールを見て罪悪感がまたこみ上げてくる。
次の日の朝、いつも通り2人で登校する。昨日のことは無かったことになったわけでもなく、でもギクシャクするわけでもなく、いつも通りに過ごすことができた。授業も終わり、勉強をするために図書室へと向かう。
最近、優美は定期的に部活を休んで病院へ行っている。たいしたことはないらしいが調子が良くない時があるらしい。今日も、その日で優美は早く帰っていたので、勉強をした後1人で帰るはずだったが、図書室に行くと大山さんが勉強していた。
「あれ、珍しいね。ここで勉強してるなんて。」
「あ、橘くん……そっか林さんだ!いつもここで待ってたんだね。」
大山さんは何も言わずとも察してくれた。
「まぁね、でも今日はいないけどね。大山さんは?今日はどうしたの?」
「私は勉強だよぉ。看護学校へいきたいんだ」
大山さんは将来やりたいことがあるのかと僕は少し焦った。真剣に勉強している大山さんの横顔はとても奇麗だった。
カレーうどんと猫とトマト ミヤザワユウ。 @toraomaru
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