第16話

私はバレー部に入って運命の出会いをした。中学からバレーをしていたから、なんとなく入った部活だったが、まさかここに出会いがあるなんて思っても見なかった。相手は2個上の先輩、橘先輩だ。完全に一目惚れをした。何かあったわけでも、してもらったわけでもないけれど見た瞬間にビビッときたのだ。この1年は楽しくなりそう。でも、橘先輩はいつも違う人を見ている。今目の前にいる大山先輩を。


「おはようございます。大山先輩♪」

「優美ちゃん、おはよう」

朝、登校時間で大山先輩とはいつも一緒になる。たまたま、本当にたまたま。大山先輩といたら橘先輩も現れるかなとか思ってないからね。大山先輩はいい人だ。これが悪い人なら私も遠慮なく橘先輩の目をこっちに向けさせるのに。橘先輩が大山先輩のことを好きなのもわかる気がすると、納得している自分もいる。

「橘くんのどこが良かったの?」

そうだ、大山先輩も私が好きなこと知っているのだった。大山先輩もというか全員知っている……。先輩たちが言うには、私は相当わかりやすい人間らしい。速攻でバレてしまった。でも橘先輩は気づいていない…はず。

「えっと……なんなんでしょうね。私にもわかりません。でもかっこいいです。」

「そっかぁ、まぁわかる気がするよ。」

いやいや、それは困る。あなたがその気になっちゃったらすぐに向こうもその気になっちゃうって!!

「頑張ってアピールしないとね。」

大山先輩がガッツポーズでこちらを見ている。本当に応援してくれているんだなと感じることができる。やっぱいいい人だ。

「はい♪」

そのあとも橘先輩の話で盛り上がり、高校についた。


なにも発展がないまま、しばらく数日が経っていた。大山先輩がおかしい。最近何か違う。いつもより早く帰っているみたい。いつもなら佐伯先輩と橘先輩と帰っていたのに。私もそこに入りたいと羨ましく思っていたのに。朝もそんなに会わなくなった。会ったときは、何にもないよと言っていたが、逆に怪しい。それに今日の部活、橘先輩が来ていない。何か2人の間にあったのか?大山先輩が応援してくれている感じは本当っぽかったし、先輩のことは信じている。でも、なんか避けている感じ?避ける理由……考えられるのは橘先輩の告白だ!きっとそうだ、ただの私の勘でしかないけど、それしかないだろう。これはチャンスと嬉しくもあったが、大山先輩の様子がおかしいのは嫌だな。モヤモヤしたままその日は過ごした。


そのまた、数日後。私の心配しすぎだったらしい。大山先輩も橘先輩もすっかり元通り。橘先輩は部活に出て来るようになったし、大山先輩とも普通に話をしている。よかったよかった……のか?


なんと先輩が教室に来た!!同じクラスの山下くんに用事があったらしい。もう心臓が飛び出た。もうこの先輩はやってくれる……同じバレー部の水寺美紅が駆け寄ってくる。

「優美、良かったじゃん部活以外で会えて。」

「びっくりした。」

山下くんと話を終えて、教室から出て行こうとする。もう行っちゃうのか。あ、目があった。

「へ?」

橘先輩が手を振ってきた。ん?私にふってる?マジか。また心臓が飛び出た。

「優美!今先輩、優美に向かって振ってたよ。なになに?なんで?」

「いや、わからないよ」

今日は何かいいことが起こりそう♪いや、今日死んじゃうのかもしれない。でも、よりはっきりした。私は先輩が好きだ。

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