第8話
放課後の練習。俺は無意識に大山さんを見ていることに気づいた。
「かっこいいなぁ……」
思わず声にでた。
「ん?何が?どした?」
近くにいた幸太が不思議な様子でこちらを見ている。
「いや、なんでもないよ」
精一杯ごまかす。この時の俺の目は日本新記録を出す勢いで泳いでいたに違いない。大山さんはかっこよかった。クラスが違うから授業中はわからないが、部活になると誰よりも真剣に練習している。休憩している時も大山さんだけは1人で練習をしていた。学校の部活が終わると、近くの体育館で大人と混じって練習している。現時点では、そんなに強くなかったが、それを自分で分かっていて努力する姿はとてもかっこよく気がつけば惹かれている自分がいた。
「集合ー!」
キャプテンが集合をかけた。3年の小谷先輩。部内恋愛禁止のルールは絶対だったが、去年僕らが中3の時にそれを破った唯一の先輩だ。すでに卒業した僕らの3個上の先輩と付き合っていたとかいないとか。
僕はこの時まだ、この先輩以上に部内恋愛禁止を破ることになる事は知るよしもない。
「よし、明日は県の予選大会だ。この大会を勝ちあがれば、関東大会が待っている。明日は全員で勝ち上がるぞ!!」
「はい!」
この日の練習を終えて、帰り道、前に大山さんが歩いているのが見えた。
「大山さん、おつかれさま」
「橘くん、おつかれさま」
2人で駅まで話しながら帰る。
「明日の試合、出れると良いね、いつも頑張ってるもんね」
「うーん、どうだろ1年で出してもらえるとは思えないけど、出れたらいいな」
「大山さんも中学の時からバレーやってたんでしょ?」
「そうだよ」
そんなことを話していると駅に着いた。
「明日の試合、頑張ろうね」
そう言って大山さんと別れた。
試合当日。朝からアップをすまして1回戦が始まった。僕はベンチにも入れず2回席から応援をしていた。先輩たちは無難に1回戦を勝ち進めた。女子の試合をチラッと見てみる。大山さんはベンチ入りしていた。
「おお…ベンチに入ってる。すげ」
僕は大山さんがベンチに入っているのを見て、自分が試合に出る以上に嬉しくなった。
試合が終わり、大山さんの所へ向かった。男子は3回戦で負けてしまい、女子も2回戦で負けてしまった。
「大山さん、ベンチ入りおめでと。凄かったよ」
大山さんは途中怪我してしまった2年の先輩に代わって試合に出たが、そこで負けてしまった。
「……うっ、うぅ……」
泣いていた。僕は何て声をかけて良いか分からなかったが、気がつくと肩を抱いていた。大山さんも何も言わず僕に寄りかかってくれた。
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