第8話 冬の浜辺で
「男の子と、こうやって腕組んで歩くの夢だったんだよ」
「俺もだよ」
ダイヤは、俺と2人でいる時は、周りに人を寄せ付けないと言っていた。
2人きりというのは、そうとらえてよさそうだ。
しかし、どのくらいの距離なんだ?
「どうしたの?冬樹・・・もしかして、恋人つなぎのほうがよかった?
なら、そういいなさいよ。シャイなんだね」
「いえ、このままでいい・・・ただ、考え事を・・・」
「考え事?彼女といる時に考え事はよくないぞ」
「だから、お前のの事を考えてたんだよ」
「えっ、わたしの?」
なんだか、目がきらきらしている。
「ねえ、教えて」
「先日、俺といるときは、ふたりきりと言ってたよな」
「うん、そうだよ」
「それは、周りに人を寄せ付けないということでいいのか?」
「うん、そういうことだよ」
「どのくらいの距離なんだ」
「半径5キロ内かな・・・」
固まってしまった。広くねえか?
「私と冬樹との時間は大切にしたいもん」
さらに、深く腕をからませてくる。
なんだか2月までというのが、惜しくなる。
「冬樹、海が見えてきたよ」
「本当だ」
ダイヤは俺の腕を掴んで走り出した。
その間に、会話はなかった。
でも、心の内はわかる気がした。
浜辺に着くと、誰もいない・・・
冬だから当たり前だけど、俺とダイヤのプライベートビーチだ。
冬だけど・・・
「俺、人気のない海が好きなんだ」
「どうして?」
「基本、人と関わるのが苦手だからな・・・だから、冬になると、時々、ここに来るんだ」
「夏は?」
「来ない」
「そっか・・・」
しばらく、ふたりで水平線を見つめた。
時間が、ゆったりと流れている・・・
「冬樹・・・」
「何?」
「・・・ううん、今日はありがとう・・・」
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