第6話 勘
俺の両親は、共働きだが同じ職場で働いている。
だが、とても共に時間が不規則で、家を開ける事も多い。
両親は、会社でも仲良くやっているみたいだが・・・
妹は中学生で、チアリーディング部に入部している。
朝練が大変で、毎朝早く出かける。
姉は女子大生で、比較的朝が遅い。
俺は高校生で帰宅部なので、朝は姉とふたりで食事する。
他は当番制だが、朝食と弁当だけは、姉が用意してくれる、
「料理は趣味よ」
姉は言うが、本当は彼氏のための、練習代になっていることを、
俺も妹も、知っている。
「そうそう、私と会う時は、下手におしゃれしなくていいからね」
「えっ、でも・・・」
「私も、おしゃれが出来ないし、それに・・・」
「それに?」
「ありのままの、君が好きだからね」
昨日の帰り際に、ダイヤは言ってくれていたが・・・
やはり、少しは気を使った方がいいな。
学校の帰りに見てこよう。
「冬樹」
「・・・・・」
「冬樹ってば」
「何、姉ちゃん」
「あんた、彼女出来たでしょ」
俺は、口に含んでいたものを吐き出してしまった。
「姉ちゃん、いきなり何を、俺にできるわけないだろ」
「あんた、私を誰だと思ってるの?あんたの姉よ、それに」
「それに?」
「女の勘を見くびらないことね」
なぜ、ばれた?
「まあいいわ。いつかお姉ちゃんに会わせなさい」
「なぜ?」
「見極めてあげるわ。あんたにふさわしい子がどうかね」
それは無理だ、姉ちゃん。
照れくささもあり、俺は早めに家を出た。
姉ちゃんは、もう少し後から出る。
姉と妹は、外面がいい。
いわゆる内弁慶の外地蔵。
外では、完璧にいい女を演じる。
家族以外、本性を知らない。
朝から、どっと疲れた。
「冬樹、どうしたの?」
ダイヤの声がしたような・・・
「いい加減、学習しなさい。上よ」
見上げると、ダイヤがいた。
「やあ、昨日ぶり」
「昨日ぶり」
「よっと」
ダイヤが下りてきた。
「どうしたの?疲れてるね」
「ああ、実はな」
かくしていても、いつかばれる。
俺は、ダイヤに今朝の姉の事を話した。
「いいお姉さんなんだね」
「そう思うか?」
「だって、君のお姉さんだもん。きっといい人だよ」
ダイヤさん、騙されないで下さい。
「冬樹、おしゃれしてるね」
「そう思うか?」
「気を使わなくていいって、言ったのに」
ダイヤは誤解しているようなので、説明しておこう。
「これは、高校の制服だ。」
「そうなの?ずいぶんセンスがいいね」
「ああ、有名デザイナーが、デザインしたらしい」
「そうなんだ。最近の学校は、すすんでるんだね。前に・・・」
「前に?」
「ううん、何でもない」
ダイヤは、隠しているな・・・
まあ、詮索はしないでおこう。
「じゃあ、俺行くから」
「うん、がんばってね。冬樹」
見送られるが、俺以外には見えないんだよな。
ホッとしているような気もするが、残念が気もする。
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