第5話 心配

帰宅した。

「冬樹お帰り」

「お帰り、お兄ちゃん」


姉と妹が、出迎えてくれる。

ちなみに姉は春奈で、妹は夏江という。

「ただいま」

簡単に挨拶をすませ、部屋にこもる。



後、母は千秋という名で、志樹(しき)という名だ。


母と、俺たち3兄弟で、春夏秋冬が揃い、父がそれらをまとめる四季から、志樹という。

俺の名前の冬樹に、父が自分の名前を入れたのは、「受け継いでほしい」という意味らしい。


予断だが、両親は共働きだ。

そのために、家事は当番制。

今日は、姉の当番だ。


「ふぅ、どっと疲れた」

冬の精霊と名乗る、ダイヤ・・・

限定とはいえ、彼女が出来た。


ダイヤは、「心配しないで」と言っていたが、やはり心配だ。


(そういや、どうやって連絡とればいいんだ?)


ベットから飛び起きた俺は、外へ出た。

「冬樹、どこ行くの?ご飯よ」

「コンビニ、すぐ帰る」

そういって、駆けだしていった。


とはいっても、俺の前にしか姿を現さないんじゃ、

呼びようがない。


ダイヤ、どうすればいいんだ。


一通り探し終えた俺は、さすがに疲れてしまい、公園で休む事にした。

「ふぅ」


「さがしにきてくれたんだね」

「えっ」

声がする。


「上よ、上、冬樹の上」

見上げるとそこには、ダイヤがいた。

さっきと同じように、木の枝に座っている。


「ダイヤ?」

「ありがとう。信じてたよ」

ダイヤが、下りてくる。


「そんな、心配そうな顔しないで」

「だが・・・」

「言ったでしょ?私は平気って・・・」

笑顔で話してくれるダイヤの顔を見る。


疲れが吹っ飛んでいく気がした。


「彼女の笑顔が、清涼剤」というのは、本当なんだな・・・


「私を探してたということは、連絡方法を知りたかったんでしょ」

「ああ」

「ごめん。言うの忘れた」

疲労と安心感で、言葉が出てこない。


「連絡方法はね」

「ああ、教えてくれ」

「私に会いたくなったら、北へ向かって、5回手を叩いて」

「5回、多いな」

「うん、でも確実に会いに行くから」

でも、ひとつの不安が残る。


「でも、もし誰かが同じ事をしたら?」

「大丈夫。彼氏との区別はつくからね」


ダイヤ・・・不思議な子だ・・・

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