第15話 聖なる夜に

「ここが、冬樹の選んだ場所?」

「ああ」

「何もないね、ここ」

「だからだよ。」

「えっ」

「今のうちに、ゆっくり話がしたくてな」

「冬樹・・・」


この公園は、とても広い。

高台もある。噴水もある。

コンビニもある。

でも他には、木と芝生しかない。


文字通り、都会のオアシス。

おまけに無料。


その為に、普段は人が多いが、今日は誰もいない。

まあ、みんなイブは華やかなところがいいだろう。


時刻は、午後5時を回る。

そろそろお腹がすいてきた。


「私はいいよ、冬樹はご飯食べてきて」

「そういやダイヤは、いつも何を食べているんだ?」

つい口が滑ってしまった。

でも・・・


「このくらいは、教えてあげてもいいかな」

「えっ」

「私の食事は、霞だよ。」

「かすみ?」

「うん。周りの空気が食事なんだ。精霊だから、他は口に出来ないの」

「そっか・・・」

正直に教えてくれたダイヤが、いとおしく思う。


ダイヤの言葉に甘え、公園内のコンビニでパンと牛乳を買った。


「冬樹、美味しい」

「ああ。ダイヤがいるからな」

「ありがとう」

なんだ、いつもと勝手が違うな・・・


「冬樹、そろそろ教えて、ここを選んだ理由を」

「理由?」

「ただ、話したいだけが、目的じゃないでしょ?」

「知っていたのか?」

「私は君の彼女よ。彼氏の事くらいわかるわ」

ダイヤは優しく微笑む。

でもその優しさは、いつもと違い保護者的なところがあった。


「わかったよ。案内するよ」

「どこへ?冬樹」

「俺から、お前へのクリスマスプレゼントの場所へ・・・」







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