第10話 タスキはもうすぐ

今日は少し、肌寒い・・・

「はおっていくか・・・」

コートを着た。


ちなみに、うちの高校は制服は決まっているが、コートは自由。

極端な話、野球ジャンパーでもOKだ。


もっとも教室内では、脱ぐことになっているが・・・


「秋の精霊は、後半月ほどで、ここまで来るよ」

そうダイヤは言っていたが・・・

はやまったか・・・


ダイヤに訊いてみよう。

北に向かって、5回手を打つ。


「おはよう。冬樹」

いきなり目の前に現れた。

「ダイヤお早う」

「どうしたの?」

ダイヤは、にこやかにほほ笑む。


「今日は、肌寒いが、先日話していた、秋の精霊さんとやらが、南下してきたのか?」

「ううん、まだだよ」

「でも、昨日より、かなり寒いが・・・」

「ああ、これね。少しだけ下げる事が出来たんだ」

ダイヤは、誇らしげに語る。


「まあ、これはストレッチみたいなものだけどね?」

「ストレッチ?」

「この間、駅伝で例えたよね?」

「ああ」

「自分の番が近づくと、タスキを受け取る前にかるく体をほぐすよね?」

まあ、スポーツなら何でもそうだろう。


「そんな、感じだよ」

「じゃあ、秋の精霊さんから、タスキを受け取ったら?」

「覚悟しておいてね」

寒くなるのをという意味だろう・・・


「で、その秋の精霊さんは、男なのか?」

「ううん。女の子だよ。季節の精霊は、みんな女の子」

「そうなんだ」

会ってみたい気もする。


「ああ、冬樹、彼女がいるのに、浮気は許さないからね」

「しません、しません」

焦った。


「よろしい」

機嫌を取り戻してくれた。


「ところで、質問なんだが」

「何?冬樹」

「何度になったら、雪は降るんだ?」

「うちの雪の精霊は、5度以下でないと、来れないから、そのあとだよ」

「うちの?」

失言を口走ったのか?

ダイヤは話しをそらした。


「だからね、冬樹。私という彼女がいるんだから・・・」

「浮気はしないってば」


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