第12話 桂木家の人々

その日の夕食は、久しぶりに家族が揃った。

そこで、外食をすることになる。


手抜きだな・・・


ちなみに、とんかつ屋だ。

妹と俺は受験生なので、「勝つように」らしいが・・・

今時、あるのか?


それに、妹も俺も大学までのエスカレーター式で、受験の必要はない。

忘れてませんか?父さん、母さん・・・


ちなみに、姉ちゃんも同じ所だ。


あなたがたが、入学させたんですが・・・

いや、幼稚園のころだから、入園か・・・


「お前ら、クリスマスはどうするんだ?」

「クリスマス?」

俺が訊き返す。

「もう、予定あるんだろ?」

父さんが、追い打ちをかけてくる。


「父さんと母さんは、レストランでお食事だ」

「ええ、父さん」

へいへい、仲のおよろしい事で・・・


「私は、彼と過ごすわ」

姉ちゃんが言う。

へいへい、こちらもラブラブなことで、羨ましいですよ・・・


「私は、友達同士でパーティー」

そうですね。中学生なら、それがいいです。


「冬樹は、どうするんだ?彼女いるんだろ?」

にやにやしている。

知ってるくせに、この親父。


「冬樹、彼女ができたんだよ。お父さん」

「うん、とってもかわいいんだ。お兄ちゃんには、もったいない」

俺はむせる。

いきなり何を言いだす・・・って、会った頃ないだろ、お前ら・・・


「本当か?冬樹」

「本当なの?冬樹」

両親が口を揃えて言う。


「本当よ、お父さん。最近の冬樹、やたらと元気なんだ」

「そうだよ。お兄ちゃん、絶対出来たんだよ」

妹よ、さっき会ったみたいな事言わなかったか?


「本当か?父さんにも紹介しろ!」

「うちの嫁にふさわしいか、母さんが見極めてあげるわ」

あなたも言いますか、母さん。


うちの女共は、いや、女じゃないな・・・

この3人・・・


その日の食事は、その話題で持ちきりだった。

美味しいはずのとんかつ定食、味がしなかった。


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