第14話

 グイッと強く腕を引かれる。

「ちょっ、せめて靴脱いでからー! 」

 静止も聞かずに私を海へと引き込む。

「冷た! 」

「でしょ? 」

 にやりと楽しそうに笑う。

「ていうか、靴濡れたんですけど!! 」

 壮馬に向かって水をかける。

「うわっ! びしょびしょ……。

 なにすんだよ! 」

 仕返しに、私がかけたより倍くらいの量の水をが返ってくる。

「きゃーー!! 」

 柄にもムキになって、水を掛け合って、走り回って。そんなことをしていたら二人ともあっという間に疲れてしまい、終戦することになった。

 防波堤の上に登って、2人して空を仰ぐ。

「これじゃ帰れないよ……。」

「今日は暖かいからすぐ乾くよ。大丈夫大丈夫。」

「そうだね。はーあ、なんか眠くなってきちゃった……」

「その格好で寝たら風邪ひくよ? 」

「そうだね。起きようっと。」

 眠らないように身体を起こして、海を眺める。

 微かに響く波の音に耳を傾けて安らぐ。


 壮馬が話し出す。


「海ってこんなに綺麗なんだね。」

「そうだよ。夏はもっと綺麗だよ。」

「夏かあ……。もう来ないね。」

「そうだね……。」

「火星は海、あるのかなぁ……。」

「無いんじゃない?」

「流石にないか。……桜とないのかな。」

「桜? 急にどうして? 」

「1度だけテレビで、見たことがあるんだ。すごく綺麗で、本物を見たいんだ。」

「桜なら、ギリギリ地球で見れそうじゃない? 」

「本当!? じゃあ、2人で見よう。約束ね。」

「わかった、約束。」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る