第3話
それから、2人で校内を歩き回った。
彼は本当に学校に来るのが初めてらしく、見るもの全てに目を輝かせては、
「ドラマの世界にいるみたいだ。」
と、口々に彼は言った。
一通り回って、再び図書室に戻ってくると、ちょうどお昼の時間だった。
「私、お弁当食べるけど、君はどうする? 」
「僕もお弁当あるよ。初めて作ってもらったんだ。」
リュックから包を取り出してニッコリと笑った。
「じゃあ、一緒に食べようか。」
向かいあって席に着くと、お弁当を広げた。彼のお弁当は、銀色のスチール製の容器におにぎりとおかずが詰められており、一昔前のアニメーション映画に出てきそうな物だった。
「それだけで足りるの? 」
「うん。少食なんだ。」
彼の前で彼の物より量の多いお弁当を頬張ることに、恥ずかしさを覚えた。だから、おかずが入った容器は出さずにサンドウィッチだけ、机の上にだした。
お母さん、ごめんなさい。後で食べます。
「ていうか、壮馬でいいよ。冬木壮馬、僕の名前。」
彼に名乗られて、自分が名前を聞くことを忘れていたことを思い出した。
「壮馬ね。私は春野あかり、あかりでいいよ。」
「あかりね、よろしく! 」
差し出された手をとって、優しく握った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます