第3話

 それから、2人で校内を歩き回った。

 彼は本当に学校に来るのが初めてらしく、見るもの全てに目を輝かせては、

「ドラマの世界にいるみたいだ。」

 と、口々に彼は言った。

 一通り回って、再び図書室に戻ってくると、ちょうどお昼の時間だった。

「私、お弁当食べるけど、君はどうする? 」

「僕もお弁当あるよ。初めて作ってもらったんだ。」

 リュックから包を取り出してニッコリと笑った。

「じゃあ、一緒に食べようか。」

 向かいあって席に着くと、お弁当を広げた。彼のお弁当は、銀色のスチール製の容器におにぎりとおかずが詰められており、一昔前のアニメーション映画に出てきそうな物だった。

「それだけで足りるの? 」

「うん。少食なんだ。」

 彼の前で彼の物より量の多いお弁当を頬張ることに、恥ずかしさを覚えた。だから、おかずが入った容器は出さずにサンドウィッチだけ、机の上にだした。


 お母さん、ごめんなさい。後で食べます。


「ていうか、壮馬でいいよ。冬木壮馬、僕の名前。」

 彼に名乗られて、自分が名前を聞くことを忘れていたことを思い出した。

「壮馬ね。私は春野あかり、あかりでいいよ。」

「あかりね、よろしく! 」

 差し出された手をとって、優しく握った。

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