第18話

 私の肩を、指が食い込むのではないかと思うくらい強く掴む。壮馬の目には涙が浮かび、今にも零れ落ちそうだ。

「生きていけないって? 」

「父に強制的に退院させられたって言ったでしょ? その時、担当医に言われたんだ。治療を続けないと先は長くないって。

 そして……」

 悔しいのか、顔が歪む。

「火星には、医療機器が十分に揃っていないから、僕の病気の治療はできないって……」

 ギリギリのところを保っていた涙が耐えきれなくなったのか、壮馬の頬を伝う。

「それも嘘でしょ……? 壮馬、ねえ! 」

「嘘じゃない! これは本当だ。僕は、地球にいても、火星にいても死ぬ。」

 優しく、抱き寄せられて、耳元で

「それならせめて、愛する人くらい守りたい。守らせてよ。お願い……」

 懇願するように。

 縋るように。

 優しく、心に訴えかけるように。

 囁かれる。

「そんなの、ずるいよ……」

 いつの間にか私も泣いていたようで、視界はぼやけているし、鼻はずるずるだしで散々だ。

 ゴシゴシと強く、袖口で涙を拭うと、改めて壮馬と向かい合う。

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