第17話

 田舎から都心まではさすがにかなりの時間がかかり、朝早くに出たはずなのに、目的地につく頃には既にお昼時になっていた。

『未来駅』

 そう名付けられたこの場所は、地球と火星を繋ぐロケットの発着地。

 駅につき、ホームに降り立つと、黒髪ロングの綺麗な女性が近づいたきた。

「冬木壮馬様ですね? 」

「はい。そうです。」

「受付までご案内します。」


 女性について行くと、通されたのは小さな個室。

「なに?ここ……」

「あかり、大丈夫だよ。」

 不安になり、壮馬の腕にしがみつく。

「さて、今回はチケットの譲渡ということで、書類はお持ちでしょうか。」

「はい。持ってきました。」


 今、なんて言った……?


「じょうと……? どういうこと。 」

「お話されていないのですか? 」

「すみません。言い出せなくて……。」

「では、私は1度退室致しますので、お話が終わったらお呼びください。」

 女性は深くため息をついて、部屋から出て行った。

「壮馬、どういうこと? チケットは2枚あるって……」

「嘘なんだ!」

 私の言葉を遮るように、声を張り上げる。

「嘘なんだ……。1枚しかない。」

「じゃあなんで、2枚あるなんて! 」

「だって! 1枚しかないからあかり1人だけ火星になんて言っても、納得しないでしょ? 」

「当たり前でしょ! 」

「あかり、分かってくれ。分かってくれよ……。俺は、生きていけないんだ。」

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